小説部屋─如月─
□一緒にお風呂
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一緒にお風呂
「なぁ、アイちゃん」
急に話しかけられたのにもかかわらず、律儀に返事をするアイちゃん。
「なぁに、ガンちゃん」
何時も時間がある時に過ごすヤッターマン基地で俺はテーブルに頬ずえをつきアイちゃんを見つめる。
「昔はアイちゃんと一緒にお風呂入ってたよなぁ」
その言葉にアイちゃんはむせた。
「ずいぶん昔の話でしょ」
「そうそう、こんぐらいの時の」
手で自分の膝よりも10センチ程上を指して言ってみた。
「可愛かったよなぁ。背中流しあいっこしたりしてさ。あっ、なんなら、今日、一緒に入る?」
とニヤけた笑いを見せた瞬間、顔面に缶ジュースが投げられた。アイちゃんのコントロールが良すぎて俺の顔面に見事にヒット。
「グフッ!」
呻き声を上げて、机にうつ伏せる俺にアイちゃんはそっぽを向いて言う。
「もう、バカな事言わないの!!」
顔を真っ赤ににして本当に可愛いんだからなぁ。アイちゃんは。
「はいはい。今のところは諦めます」
素直に返事をした俺の言葉の中に含まれている「今は」というところに反応して、アイちゃんはふるふると震えた。
あっ、これ以上はヤバイかも。
「んじゃ、俺、ヤッターワンの調整に行ってくるから」
とアイちゃんが怒りを爆発させない内にそそくさと倉庫の方へ歩いてきたけれど、アイちゃんは今も昔も変わらない。
どうか変わらないでいて。
幼い頃のアイちゃんも今のアイちゃんも俺にとっては今も昔も変わらず大切な人だから。