小説部屋─山猫─

□吊り橋効果
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「あ、ガンちゃん見てっ?、吊り橋があるわっ?」
久しぶりに遠出のデートって事で、アイちゃんとサイクリングで山道の車道を走っている時、アイちゃんが指を指した山と山の間に吊り橋が見えた。
「よし、あそこまで行ってみよう」
「うん」
自転車をそこへ止めて、先導と山登りの手助けにアイちゃんの手をとって、その吊り橋目指して山道を登る。

「ふう…。やれやれ、やっと着いた…」
下から見るとすぐに着けそうだったその吊り橋の場所にも、実際登ってみると結構距離があって。
なかりの時間歩いて、やっと吊り橋の所まで辿り着いて、額から流れてくる汗を腕で拭った。
「大丈夫かい?、アイちゃん」
「ええ、大丈夫」
かなりの高さがある橋だからアイちゃんが怖いんじゃないかと思って、ずっと握っていた手をそのまま握ったまま、アイちゃんを連れて、結構ボロい橋の上を渡っていく。
「ん〜いい眺め〜∨。うわ〜高ーい♪」
橋の中ら辺まで来た時、足を止めたアイちゃんが橋の綱に片手を乗せて、景色を眺めていた顔を橋から出して下に覗き込ませた。
「…。なあアイちゃん」
「ん?」
そのアイちゃんの横に立って顔を見ながら名前を呼んだら、下を見ていたアイちゃんの顔が向いてきて。
「アイちゃん、吊り橋効果って知ってるかい?」
「吊り橋効果?。なぁに?、それ」
そのアイちゃんの顔を見ながら聞いたら、アイちゃんが可愛く首を傾げた。
「吊り橋効果ってのはね、こういう高い所とか怖い所に行くとドキドキするだろ?。男女で吊り橋を渡ると、頭がそのドキドキを相手が好きのドキドキと勘違いして恋に落ちるんだってさ」
「へ〜、ガンちゃん物知りね∨」
「ぃ…いやぁ///、それ程でもないだろうけど///」
俺の話を聞いていたアイちゃんが感心した顔で笑顔を浮かべて。
そんなアイちゃんの様子にちょっと照れくさくなりながらも、
「…でもアイちゃんあんまりドキドキしてないみたいだよなぁ…。高い所とか怖くないの?」
今もいつも通り、全然普通に笑ってるアイちゃんに、思ってる事を言ってみた。
これだけの高さだったら普通、女の子なら怖がったり、ここまで歩いて来れない子だっているだろうに、アイちゃんは楽しげに下の川まで見下ろしていた。
まぁ確かにヤッターマンになった時は、かなり高い所から参上する事もあるけど。
でも俺としてはちょっと残念な気持ちもする。
もっと『怖いーっυ』とかって抱き付いてきてくれたりとか、怖さで動けなくなったりとか。
高い所も平気なアイちゃんも勇気があって好きだけど、ちょっとそういう、か弱いアイちゃんも見てみたいと思う。
「ええ。だってガンちゃんがいるもの」
「え、俺?」
訊いた俺を真っ直ぐ見ながら言ってきたアイちゃんの顔を見ながら、どうして俺が居るから怖くないんだろうと頭で思った。
「うん。ガンちゃんと一緒なら私はどんな高さだって怖いなんて思わないし、今もガンちゃんが手を繋いでいてくれてるから、もっと怖いなんて思わない∨」
「………。アイちゃん…////」
「それに私はいつもガンちゃんにドキドキしてるし、もうずっとガンちゃんの事好きだもん∨。吊り橋効果だって関係ないわ?∨」
「──//////。アイちゃん!!!∨」
「キャアッ!//////」
アイちゃんの可愛い言葉と、それ以上のアイちゃんの可愛い笑顔に、我慢出来ずに抱き付いたら、耳元でアイちゃんの短い悲鳴が聞こえた。
「ちょっとガンちゃん!//////⊃⊃、危ない!//////⊃⊃」
アイちゃんが叫んでるし、吊り橋がグラングラン揺れてる気がするけど、嬉しさと可愛さに離れる気になれない。
確かにアイちゃんの言うとおり、吊り橋効果なんて、俺とアイちゃんには関係無い。
アイちゃんはいつも俺にドキドキしてくれるって今言ってたし、俺を好きでいてくれてるのはもうずっと前から知ってる。
俺だっていつもアイちゃんにドキドキして、ずっと前からアイちゃんが好きだ。
だから吊り橋効果なんて関係ない。
「ねぇガンちゃんっ!υ。危ないってっ!υ」
「ん…、ああ…うん」
耳元で聞いていたアイちゃんの声にちょっと不安そうな感じが混じってきたから、ちょっと名残惜しいけどアイちゃんから離れた。
「…///」
「?。アイちゃん?」
「…手は離しちゃイヤ…///」
「///。う…うん…///」
抱き付いた時に離した手。
その手をアイちゃんから握ってきて、恥ずかしそうに可愛い事言うから、俺まで照れくさくなって。
「///…じゃあ行こうか…///」
「うん…///」
手の中の柔らかくて小さいアイちゃんの手をしっかりと握りながら、吊り橋を渡っていく。
心臓がドキドキしてるけど、それは完璧に吊り橋の高さのせいじゃなく、アイちゃんと手を繋いでる為だから。
俺の手をしっかりと握ってるアイちゃんの手から、俺のドキドキがアイちゃんに伝わってると嬉しい。
でも多分伝わってるんじゃないかと思えるのは、アイちゃんのドキドキが伝わって来てる感じがするから。
さっきは関係ないって思ってたけど、吊り橋効果でもっとアイちゃんが俺の事好きになってくれたらいいなぁと思うと、またドキドキが少し上がった。


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