小説部屋─山猫─

□なでなで
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「いってぇ〜〜〜〜υ」
「どうしたの?、ガンちゃん」
ぶつけた所を帽子の上からさすりながら部屋に入ったら、アイちゃんが訊いてきてくれて。
「うん…υ、ヤッターワンの中メンテナンスしてたら、出る時に頭ぶつけてさぁ…υ」
「まぁ、大丈夫?。ちょっと見せてみて?」
「ん…」
近寄ってきたアイちゃんに帽子を取って、アイちゃんが見やすいように体を屈めて頭を下ろす。
「ここ?。あ、コブが出来てる。痛い?」
「うん、ちょっとまだジンジンしてる…」
「傷は出来てないけど気を付けなきゃ」
(………ん…)
ふいに起こった頭をさすられてる感触と、髪の毛がクシャクシャ動く感覚で、アイちゃんが撫でてくれてるのが解って。
「痛いの痛いの、飛んでけー」
(…………)
「どう?、治った?」
アイちゃんは冗談のつもりだったみたいに可笑しそうに笑って訊いてきたけど、
「うん…。…治った…」
冗談でも嘘でもなく、ほんとに治った。
アイちゃんのやる事の可愛さと、アイちゃんの可愛さで、意識から痛さの感覚が消えた。
「ふふふっ。ガンちゃんてば嘘ばっかり。待っててね、冷やすもの持ってくるから」
(…………)
嘘なんて言ってないし、第一アイちゃんに嘘なんかつかない。
でもそう言うのも言えなかったくらい頭がぼんやりしてる。
頭を打ったからだとかじゃなくて、アイちゃんが可愛かったから。
(…たまには頭ぶつけるのもいいもんだなぁ…∨…)
まだアイちゃんが撫でていた感覚が残ってる頭に手を当てて、自分でその感覚を再現させる。
でもアイちゃんの小さい細い手と俺の手じゃ、大きさもゴツさも全然違ってて。
…やっぱりアイちゃんの手の方がいい。
アイちゃんの手で撫でてほしいし、アイちゃんに撫でてほしいから、…アイちゃんが戻ってきたらもう一回撫でてほしいって言ってみようかとか考える。
アイちゃんなら言えば撫でてくれるだろうし、冷やすよりアイちゃんが撫でてくれる方が早く治る気がするから。
「………。アイちゃーん」
そう考えたらアイちゃんが戻ってくるのも待ちきれなくなって、多分台所でタオルを濡らしてると思うアイちゃんの所に、自分から催促に行った。


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