小説部屋─山猫─

□怖い夢
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「ガンちゃあん…」
「んぁ……?…。…アイちゃん……?」
顔のすぐ横からアイちゃんの声が聞こえた気がして目が覚めて。
顔だけ動かして横を見たら、ほんとにアイちゃんがそこに居た。
「どうしたの、アイちゃん。…アイちゃん…?」
俺の部屋に居て、しゃがんでるのかベッドの縁に手をついて俺を見てるアイちゃんの目は、濡れてるみたいに見えて。
「どっどうしたのアイちゃん!⊃⊃。なんで泣いてるんだ!?⊃⊃」
目に涙を滲ませてるアイちゃんに驚いて、慌てて飛び起きた。
「…ふぇ…っ。ガンちゃあんっ!」
「うわっ!υ。…アイちゃん…?υ」
体を起こした俺の首に勢いよく抱き付いてきたアイちゃんに、何があったのか解らないけど、何かがあったらしい事は確かみたいで。
「アイちゃん、どうし」
「怖い夢みたの…」
「夢?」
「うん…」
俺にしがみついて涙声で言ってきたアイちゃんは、どうやら悪い夢をみて不安になって俺の部屋に来たらしい。
「どんな夢みたの?」
「……言えない……」
「?」
怖い夢をみたとは言って、でも内容は言ってくれないアイちゃん。
言えないような怖い夢ってどんな夢だ?と、ちょっと考えてみたけど解らなくて。
「どうして言えないの?」
言えないような怖い夢の想像が付かないから、アイちゃんに訊く事にした。
「…だって言ったらガンちゃんに嫌われるかもしれないもん…」
「俺がアイちゃんを嫌いになるような夢?。?」
首に抱きつくアイちゃんをそのままに、アイちゃんの言葉をヒントに、もう一度考えてみる。
でもやっぱり想像がつかない。
「…どんな夢か解らないけど、俺がアイちゃんを嫌いになるわけないじゃないか。ねぇ言ってよ。じゃないと俺だって気になるし」
「………でも…」
アイちゃんの背中に手を当てながら言ってみても、アイちゃんは言いたくないみたいで。
でも…。
「それに悪い夢は人に言わないとほんとの事になるって聞いた事もあるし」
「えっ!?」
アイちゃんのみた悪い夢が本当の事になったらアイちゃん嫌だろうから、どこで聞いたかは忘れたけどそれを言ったら、アイちゃんが勢いよく俺の首から離れた。
「ヤだガンちゃん!、脅かさないで!」
「別に脅してなんかいないよ。ほんとにそう聞いたんだよ」
「────。…ぅ…」
「Συ」
アイちゃんを見ながら言ったら、泣きそうな顔をしていたアイちゃんの目にじわあと涙が溜まってきて。
「うああああん!!!」
「わっ!υ。なっ泣かないでくれよアイちゃんっ!υ⊃⊃⊃。ごっごめん!υ⊃⊃⊃。別に泣かすつもりで言ったんじゃないんだ!υ⊃⊃⊃」
大声あげて泣き出したアイちゃんに、焦りながら思わず謝る。
アイちゃんはいつも明るく笑っていて、泣いた事なんて今まで一度だってなかったし、なんか俺の言った事のせいで泣いたみたいな感じだったから、アイちゃんを泣かせたと思って余計に焦る。
「なっ?υ⊃⊃、ごめんアイちゃ」
「ひっくっ…、違うのぉ…」
「え…?υ」
オロオロしながらアイちゃんに謝ってると、自分で手の甲で涙を拭いながら言ったアイちゃんの"違う"の言葉に、思わず言葉が止まった。
「んくっ…、…ガンちゃんは悪くないわ…?…。…夢が本当の事になったらって思ったら…そんなのイヤだったから……ひくっ…」
(………)
俺が泣かしたみたいじゃない事には安心して。
でもこれくらい泣くような夢ってのがほんとにどんななのか、余計に気になってくる。
それに、こんなにアイちゃんが泣くような夢をアイちゃんがこれからも一人で自分の中だけに抱えてるって考えると、やっぱり今言わさなけりゃと思う。
「な…?、アイちゃん。俺はアイちゃんの事嫌いになったりしないし、話してよ」
下のまつ毛についてる涙の粒を人差し指で拭ってやって、アイちゃんを促したら、アイちゃんが少しだけ顔を俯かせた。
「……ガンちゃんが私から離れていく夢をみたの…」
「え?」
いつもの元気なアイちゃんの澄んだ声とは全然違う、澄んでても力のない声で言ってきた夢の内容に少し声が出た。
「ガンちゃんに他に好きな人が出来て、その人と歩いていくガンちゃんの夢…。私がいくら呼んでも振り向いてもくれないで……」
(…………)
言ってるアイちゃんの目にはまた涙が溜まってきて、見る間にポロポロとその涙が落ちていく。
「…。……」
そんなアイちゃんのほっぺに軽くチュウをして、
「バカだなぁ、アイちゃん」
「…ガンちゃん…?」
そんな事あり得ないから、その事に笑いながら言ったら、涙が止まったアイちゃんが俺を見てきた。
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