小説部屋─山猫─

□ヤキモチ
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「ねーねーアイちゃん」
「………」
「アイちゃんてばー」
「……υ。もう、ガンちゃんてばちょっとうるさいυ。テレビに集中出来ないじゃないυ」
毎週見てるドラマを見てる後ろから聞こえてくるガンちゃんの声で、セリフも声もよく聞こえなくて。
おまけに気も散るし、専念してドラマが見られないその原因になってるガンちゃんを振り返った。
「だってアイちゃん、さっきからテレビばっか見てるじゃんかぁυ」
私みたいにクッションに座ればいいのに、あぐらをかいてカーペットに直に座ってるガンちゃんは、眉毛を八の字にさせて、すごい不服そうな顔をしてて。
「だって私このドラマ楽しみにしてるんだもの。ガンちゃんだって知ってるでしょ?」
その顔つきに見合った、ちょっと困惑も混じった声で言ってきたガンちゃんを振り向きながら言葉を返した。
ちょっと理由があって見てるドラマだけど、結構ストーリーも面白くて、毎週見るのが楽しみになってて。
ガンちゃんもそれを解ってくれてる筈なのに、なのに今日はなんだか不服そうな顔で文句みたいな事まで言ってきてる。
「ぶぅ〜υ。アイちゃん、俺とテレビとどっちが大事なんだよぉ」
「ん…υ」
頬を膨らませて、拗ねた顔つきで言ってくるガンちゃんに言葉が詰まる。
毎週楽しみにしてるドラマだから、テレビは見たいけど。
でも大事なのはガンちゃんの方だし…。
ていうか、やっとガンちゃんが私を好きになってくれて、不完全だったけどそれでも告白もしてもらえて、やっとガンちゃんと幼なじみから恋人同士の関係にはなれて、それは嬉しいんだけど。
そしたらちょっとガンちゃんてば独占欲が強いタイプらしい事が解ってきた。
今まで全然私の気持ちに気付いてくれなくて、『恋愛?、なにそれおいしいの?』みたいな、100パー花より団子なガンちゃんだったから、そんなガンちゃんが恋人になった途端に独占欲を表し出したのがちょっと意外で。
でもそれで、それだけガンちゃんがホントに私の事好きになってくれた事が解れるから、それはすごく嬉しいんだけど…。
でもマイペースで独占欲が強いっていうのは、いざ彼女の立場になってみたら、マイペースだけだった幼なじみの頃以上に付いていくのが大変で…。
「…もぅ、解ったわよ…υ」
それでも、それもそれだけ愛されてるって事よねと考えながら、仕方なく、崩してた足を正座にしながら、テレビから後ろにいるガンちゃんの方に体を向け直した。
「それで?。なぁに?」
「うん?」
正面のガンちゃんに訊いたら、ガンちゃんの声が少しだけ傾いて。
「?。なにか用があったんじゃないの?」
「うんにゃ?。別に用は無いけど?」
「………。じゃあなんで呼んだわけ…?υ」
キョトンとした顔で私を見てるガンちゃんにちょっと呆れる。
用もないのにあれだけしつこく呼んでで、なにもないのにあのしつこさで呼んでた事に、子供の頃から一緒にいるのに、やっぱり未だにガンちゃんのこういう所は解らないυ。
「…だって…」
そんな私を見ていたガンちゃんが口を尖らせて、ちょっと斜め横に顔ごと視線を俯かせた。
「アイちゃん俺の事ほったらかしでテレビ見てるし…」
なんだかつまらなそうなガンちゃんの顔には、ちょっと不機嫌な表情も混じってて。
「せっかく俺といるのにさ…。そのドラマの時だけ俺の事ほったらかしだし…」
(//////……やだ…//////…ガンちゃんてばかわいい…//////)
私にほったらかされて拗ねてるガンちゃんに、そんなガンちゃんが可愛くて胸がキュンとなる。
「それにアイちゃん、その男のタレントばっかり見てんじゃん…」
「え……///」
「そのドラマだけじゃないし……。そのタレントが出てる番組はチェックしてまで見てるし。俺気付いてんだぜ?」
今度は拗ねた顔に不機嫌さが混じって、斜めの上目遣いを私に向けてきてるガンちゃんを見ながら、そんなガンちゃんの言葉に結構驚いた。
私のしてる事、結構見てくれてるんだって。
恋人になる前はやっぱりマイペースに、あんまり私のする事に関心なんて持ってくれてないみたいだったのに。
でも確かに、私はあのタレントの出る番組をチェックしてるし、あのタレントの事が気になってる。
だから今もそのタレントが出てるこのドラマを見てるんだけど…。
「………」
すごくつまらなそうなガンちゃんを見てて、まさか…って考えが湧いてくる。
「…ガンちゃん…?…」
「……なに…」
口を尖らせて顔を逸らしたまま、目だけ向けてきてるガンちゃんに、もしかしてって気持ちが大きくなる。
「…もしかしてガンちゃん、ヤキモチ焼いて…」
くれてるの…?。
「う…///υ。べ、別にヤキモチなんて焼いてねーし…//////υ。…ヤキモチなんて焼いてねーけど…//////…υ」
なんだかヤキモチ焼いてる事を認めるのが恥ずかしいみたいに否定してくるガンちゃん。
「…焼いてねーけどさ…//…υ」
バツが悪そうに、でも他に言い訳の言葉も思い付かないみたいに言葉を淀ませるガンちゃんは、でもどう見たってヤキモチ焼いてくれてるようにしか見えなくて。
ガンちゃんがヤキモチ焼いてくれてる。
ガンちゃんを見てて、それがすごく解るから。
だからガンちゃんにヤキモチ焼いてもらえてるのが嬉しくて。
「だってこのタレントさん、ガンちゃんと似てるから///」
「え…?」
その嬉しさを顔に出したままガンちゃんに言ったら、キョトンとした表情になったガンちゃんの顔が真っ直ぐ私に向いてきた。
「どこが!?υ。俺こんな垂れ目じゃないじゃん!υ。髪型だって全然違うし!υ」
私の後ろのテレビを指差して訴えるガンちゃんのその手が指す後ろを向く。
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