小説部屋─山猫─

□耳掃除
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「アイちゃん、耳掃除する物ねぇ〜?」
「耳掃除?」
私の部屋でカーペットに座って話をしてる時に、ガンちゃんが片耳に小指を入れながら言ってきた。
「朝からなんとなく耳が痒くてさぁ。なんか今、本格的に痒くなってきたんだよね」
「あるわよ、ちょっと待ってて」
ガンちゃんの要望に、パパが使ってる耳かき棒を取りに行く。
(ん…。///)
耳かき棒を持ってきて、戻ってきた部屋の前で思い付いて。
「…ねぇ、ガンちゃん…///」
「うん?」
ドアを開けながらガンちゃんを呼んだら、耳に指を入れながらガンちゃんが振り向いてきた。
「耳掃除…してあげようか…?///」
「え、マジ?。いいの?」
「うん…///」
嫌がるでもなく訊いてきたガンちゃんに安心しながら答えて、ちょっと恥ずかしい気持ちもありながらベッドに座る。
「じゃあ…ここに頭乗せて…?///」
「おー♪」
揃えた足の太ももに手を起きながらガンちゃんに言うと、意気揚々とベッドに座ったガンちゃんが、そのまま何の躊躇いも抵抗もなく私の足の上に頭を乗せてきた。
(……ガンちゃんに膝枕してる…///)
子供の頃からずっとガンちゃんといるけど、初めてした膝枕。
でも、私は嬉しくて、でも恥ずかしさもあるのに、向こうに顔を向けて私の足に膝枕してるガンちゃんは何も思ってないみたいで。
ただ楽しみそうに耳掃除を待ってるみたいなガンちゃんにちょっと思うところもありながら、耳を隠してる髪の毛を退かせた。
耳の中は結構きれいで、掃除する程でもないけど、せっかくのガンちゃんの耳掃除だから少しだけしようと…。
「……Σ、ぎゃははははっ!!!」
「Σ!!?」
耳かきのスプーンを耳の中に入れて、スプーンの先で耳の壁を撫でた瞬間、急に笑い出したガンちゃんにビックリして。
思わず咄嗟に耳かきを耳から抜いた。
「なっなにっ!?υ⊃⊃、ガンちゃんっ!υ⊃⊃」
「だってくすぐってぇ〜(笑)」
困ったみたいな八の字眉毛で笑って言ってくるガンちゃんだけど、初めて人の耳掃除をする私はちょっと緊張してたから、急に出したガンちゃんの声に動揺してドキドキして。
「うち、耳掃除はいつも綿棒だからさぁ。耳かき棒ってくすぐってぇ〜」
私のドキドキに気付いてないみたいなガンちゃんは、よっぽどくすぐったかったのか、でもなんだか楽しそうにも笑ってる。
「…じゃあ綿棒の方がいい?υ。あるけど取ってくる?」
「いんにゃ、これでいい。なんか綿棒より気持ちいい」
「そう…?υ。じゃあ動かないでね?υ。危ないから…υ」
「ん〜」
さっきは声だけだったからよかったけど、もし大きく動かれでもしたら危ないから軽く釘を刺したら、ガンちゃんから鼻から抜けた返事が返ってきた。
(………υ…)
頭に思ってたのは、前にドラマで見たような、男の人も嬉しそうに、でも静かに耳掃除されているような画で。
そんなロマンチックな雰囲気の耳掃除だったのに、ガンちゃんは『うひひひひ』とか『くひひひひ』とか変な笑い方を口から漏らしながら、縮こめた体を小さく揺らして笑ってて。
そのガンちゃんに、こっちは大きく動いてくるかもしれないから、ちょっとヒヤヒヤしながらガンちゃんの耳掃除をするυ。


「…はいυ、じゃあこっち向いてυ」
「ん〜♪」
片側が終わって、次の片側をする為にガンちゃんに言ったら、笑いながら体を私の方に寝転がせた。
「うひ〜(笑)」
(……υ…)
掃除を始めたら、やっぱり同じように体を丸めてくすぐったそうに楽しそうに笑ってるガンちゃんに、片側よりは馴れたから、その変な笑いを聞きながら耳掃除をする。
「…はい、終わりυ」
「え、もう終わったの?」
耳の中がきれいな事が幸いして、私は早く終わってホッとしたけど、ガンちゃんはちょっと残念なのか、そんな顔が私に向いてきた。
「は〜あ、面白かったぁ♪」
それでも満足そうに笑いながら、掃除した耳の中に小指を入れるガンちゃん。
「…私はなんだか疲れちゃったんだけど…υ」
「?。なんで?」
そんなガンちゃんとは間逆に、私は体から力を抜きながら言ったら、耳から指を抜いたガンちゃんが私を見上げてきた。
「だって、ガンちゃん急に大きく動いてくるんじゃないかと思って、こっちは心配だったんだから…υ」
「え〜?、動かねぇって(笑)。俺だって動いたら危ない事くらい解ってるし」
「ん〜…υ」
確かに大きく動いたりはしなかったけど、ずっと体は揺れっぱなしだったから、結構頭も揺れてて怖かったんだけど…υ。
(…………)
耳掃除は終わったけど、ガンちゃんは膝枕したままで。
「ぁ〜…、なんか俺眠たくなってきたなぁ…。ふわああ〜ぁ…」
いかにも眠たそうな雰囲気で大きなあくびを1つして目を瞑ったガンちゃんに、
「…ねぇ、ガンちゃん…」
「ん〜…?」
あんまりいつも通りで、膝枕してる事に対しても、私の足に頭を乗せてる事に対しても、全然気にしてないみたいだから、ちょっと悲しくなってきて。
「初めて膝枕したけど…どう…?…」
「ん?」
初めての膝枕の感想を訊いた。
「膝枕…?」
キョトンと私を見上げていたガンちゃんがなんだか呆けたみたいな顔をして。
その顔がちょっと動いて、目線はそのまま自分の顔の下にある私の足の方に向いた。
「…!!!//////////////////」
瞬間、驚愕したみたいに目を見開いたガンちゃんの顔が真っ赤になった。
「─────////////////」
真っ赤な顔のまま、動かなくなったガンちゃん。
…もしかして耳掃除してもらう事(楽しそうな事)に気が行ってて、『膝枕で寝てた』事、今気付いたの…?υ。


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