物語
□シンエネ
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「……っ、ん……」
窓から差し込む朝日が丁度目に当たり、目を覚ます。
今日は平和でよかった。いつも、『あいつ』の莫大な音量のアラームで起こされるという絶望の日々を繰り返していた俺には、こんな誰もが普通だろうと言う朝も俺には普通じゃない。幸せなる日々なんだ。そう幸せ。幸せ……
……幸せ、なんだ……。
……隣にこいつさえ居なければ。
「んぅ……もぅ、……」
俺の隣で朝からすうすうと寝息を立て寝ているこいつはエネ。普段は俺のパソコンの中で元気に遊びまわっているんだが……
何故か実体化している。
そもそもなんでこいつは実体化しているんだ?実体化出来るなら先に言って欲しい。
なんだか考えるのも疲れてくるので、エネを揺すって起こす。
「……なんですか、ご主人……近いですよぉ……秘蔵画像でもばらまいて欲しいんですかぁ……」
半分寝ぼけつつ、腕を持ち上げすすっと動かす。いつもなら此処でファイルなどが出てきて、写真などを一枚一枚出されるんだろうが、全くもってでない。 当たり前だ。現実だからな。
それでも本人は諦めず、腕を何回も振るう。終いには、ブンブンと力ずよく振るだけで、何かの運動の様になって終わってしまった。
反応をみた所、本人の意志ではないのか……?
「ごごご、ご主人⁉︎ 私実体化しちゃいましたよ⁉︎ どど、どうします⁉︎」
「どうもしねぇよ……」
俺の冷めた態度で目が覚めたのか、そうですよねー。と言って話は終わった……筈だった。
「どうもしねぇよ……じゃないですよ‼︎ これでも一応、私はご主人が……‼︎」
ご主人が、まで言って途端に言うのをやめてしまうエネ。しかし途中まで言われたら気になってしまい、聞いてみる
「俺がなんなんだよ……」
「……ご主人、が………や、……優しい人だと思ってたんですよ⁉︎」
少々言葉に行き詰まってたのはそれのせいか。……優しいとか。
「あーはいはい、優しくないですよ」
そう言って適当にかわす。
するとエネは頬を膨らましてこういった。
「むぅっ、ご主人‼︎
デートしましょう‼︎」