黄昏時に伸びる影(合同小説)
□黄昏
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所は変わって影の世界。
一人の出来損ないの魔物が暇を持て余していた。
「出来損ないって言うな!」
叫んでから、はて自分は今何に対して怒鳴ったのかと考える。
この魔物、名をレイドと言う。
顔の右半分を長い前髪で隠し、その隙間から覗く真っ黒な肌は『奇妙』、この一言に尽きる。
顔だけでなく腕、足、腹までも、右半身はすべてが真っ黒な影なのだが、不思議なことに左半身は足が人形のようになっていることを除けばただの人間のようである。
実に奇妙な魔物だ。
半身は影、半身は光でできているこの奇妙な魔物はザントの一番側に仕えている魔物である。
「ザントサマァ、こんなところで待ってても誰も来ないですよぉ…」
その呟きに返ってくる声はない。
今現在レイドはザントの命によって門の見張りを押し付けられていた。
だが見張っていたところで今更ザントに反発しようと武器を手にする者もなし、侵入者もゼロとなれば暇で暇で仕方ない。
はぁーっと深いため息を吐いては地面に寝転がるレイド。
危機感もゼロである。
「オレも光の世界行ってユウシャ倒したい」
そう言って目を閉じる。
しばらくそうしていると何者かが近寄ってくる気配に気付く。
チラと目を開けてみると魔物にされた影の住人たちが大勢、レイドを覗き込んでいた。
「わあぁッッ!?」
大袈裟に驚いて飛び起きる。
彼らが危害を加えてくることはないとわかってはいても魔物である以上恐ろしいものは恐ろしい。
自分も魔物だということはこの際棚に上げておく。
「ワタシを驚かせるなんて…なかなかやるな…!」
こうした悪ふざけも暇つぶしになるのなら良い。
「キミ達もいずれは光の世界へ行くのだろう?ボクも連れて行っておくれよ」
全く一人称の定まらない彼だが、光の世界への憧れは人一倍強かった。
体の半分が光でできている彼にとって影の世界は微妙に暮らしにくいのだ。
光の世界でも同じように過ごしにくいのか、それとももっと過ごしやすい世界なのか、興味は尽きない。
「あぁー!メランもアカリも早く帰ってこないかなー!」
そう言ってレイドは大きく伸びをした。