黄昏時に伸びる影(合同小説)
□黄昏
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その時。
(…ド…レイ、ド。聞こえているか)
「ん、この声は…アカリ?」
聞き慣れた声が頭の中を駆け巡り、パッとおかっぱの彼女に突き当たる。
自称幽霊である彼女は、テレパシーで遠くにいる相手とコミュニケーションを取るという特技があるのだ。
若干ノイズのようなものが入ったのは、多分離れすぎているからだろうか。
(はいはい、アカリ?オレになんか用?)
普段はほとんど会話をしない周りに無関心なアカリだが、今は光の世界に行っている。
もしかして何か面白い事でもあったのだろうか、と期待して返事をしてみた。
(…レイド、こっちで起こった事をザントの所で話し合いたい。すぐにハイラル城へ向かえるか)
「ハイラル城…え、光の世界に行っていいの!?」
思わず空中に向かって叫ぶ。
叫んだらアカリには伝わらないことも忘れ、レイドは目を輝かせた。
憧れ、ずっとずっと行きたかった光の世界。
それも、ザントのいるハイラル城。
行かないわけがない。
(ねぇ、ねぇ、ねぇ!アカリ、アカリ!ホントのホントに行っていいの!?)
(…ウルサイ、ザント様をお前の所に呼ぶわけにもいかないだろう…それにコレを持って行っていいか判断がつかん)
若干不機嫌なアカリの声も気に留めず、はしゃいで質問を繰り返す。
(コレ?そういやさっきも何か言ってたね。何かあったの?)
(…コッチの湖の底の神殿で、知能の高い魔物が見つかった。想定していなかった事だ。だからザントに報告しなきゃいけない。)
(知能の高い…?それって、ボクみたいな?)
(いや、違う)
衣着せぬ物言いにレイドの体が軽く傾いた。
(そこそこ戦力になりそうな奴だ。剣を持ってるから剣士だろう…神殿の中でメランが見つけた。)
(…それ、オレが戦力じゃないってイッテルノ?アカリちゃん)
(年下はおとなしく守られておけ。それにお前の力も影よりだからそっちの方が力が出せるからな。……あと、)
(あと?)
(ちゃん、をつけて呼ぶなと何度言えばわかる。次言ったらその足に札貼り付けて使い物にさせなくするぞ、覚えておけ)
(…ハイ)
トーンを落としたドスの効いた声に、思わず背筋が伸びる。
これが対面だったら、本当にアカリに呪詛をぶっ放されていただろう。
テレパシーで良かった、とレイドは心から思った。
(こっちはもう移動できるし…あと何かザントサマにおつたえすることってある?)
(…今のところは特にない、な。問題なしだ)
(おっけー。りょーかい。じゃ光の世界で!)
そう心の中で伝えて、改めて目の前の影の住人たちを見る。
「…と、そうだ。アカリからお知らせがあったから、ココ見張るの代わりにやっててもらえない?」
《!?》
「多分ほんの数分…いや、数日だし、誰も来ないと思うし。お願い!頼りにしてるよ!」
そう言い、レイドはザントの元へ行くために光の世界へと入っていった。