黄昏時に伸びる影(合同小説)
□謁見
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雨のハイラル城、中庭。
「……レイド、1人だけか?」
あのあとなんとかハイラル城中庭まで入りこんだワタシ達。
その先に1人の男が座り込んでいるのを見つけた。
雨に濡れた黒髪が顔を隠しているが、あれはレイドだ。
近寄って上から聞いてみるも、返事がない。
マリオネットのように俯いて座り込むレイド。
メランが迎えに行ったはずなのに、どうしてこんな雨の中ここにいるのか。
「……アカリ」
緩慢な動作でワタシを見上げた後、立ち上がって笑おうとした。
だけどその表情には覇気が抜けており、どこかぎこちない。
「メランはドウシタ? お前を迎えに行ったはずだが、会わなかったノカ?」
質問を投げかけるも、ぼうっとした態度は変わらない。
やや遅れて返事が来た。
「……あ、置いてきちゃった……」
脱力したのは言うまでもない。
いつものような小言を一言二言ぶつけてやろうかと思ったが、やめた。
今のこいつには、どんな小言でものれんに腕押しな気がしたのだ。
本当にレイドはどうしたのだろうか。
さっきから心ここにあらずで何かをずっと考えている気がする。
頭からクラッカーみたいに爆発音がする札を貼ったら変わるかな、となんとなく思っていると、後ろから黒男(メランが拾ってきた全身黒ずくめ)の気配がしてきた。
「チ…、…アカリ、誰だこいつ。」
こいつ、今ワタシの事チビって言いかけやがった。
そういえばレイドと黒男は初対面だったな、と思いつつ肩越しに振り返る。
「……レイドだ。 レイド、この真っ黒がちょっと前に話してた、『報告しなきゃいけない事』」
「……知能の高いマモノ?」
ワタシの言葉にレイドが顔を上げる。
黒男を見、自分を見、また黒男を上目遣いで見上げた。(レイドは黒男より小さい)
「……ホントにマモノ、なのか?」
「……そうだが」
レイドの視線に押されたように黒男がたじろ
ぐ。
その答えを聞いた後、レイドは何故か肩を落として自分を見下ろし、またまた黒男の目を見て……睨んで? 手を差し出した。
「ワタシはレイド。 ザントサマに造られた、ザントサマのマモノだ。お前は?」
「……お前も初対面で握手するタイプの人間かよ」
「オレ、マモノだ」
「……言葉の綾だ。 ダークリンク。ある男の影のマモノだ。」
ため息をつきそうな顔した黒男がレイドの差し出した手のひらを軽くぱん、と叩く。
握手はダメでハイタッチはアリとか意味わからん。
「……影の、マモノ……?」
対するレイドは目を見開いて固まっている。
まぁ、何百年も前の盗賊に造られた生きたマモノなんて普通ないからな。
……何故か胸がチリっと傷んだ。
その痛みを誤魔化すように別のこと……今の時間を確認する。
思念リンクで映し出された時計は、約束の時間10分前を指していた。
「……もうソロソロ時間だ。メランは後回しにして、先にザント様に報告しに行くぞ。」
ふわん、と今となっては軽くなってしまった体を振って2人を促す。
可哀想な気がするが、メランは放置だ。