黄昏時に伸びる影(合同小説)
□黄昏
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音を立てて水から上がる。
崖の上から吹いてくる乾いた風に髪がなぶられる。
神殿の水分をたっぷり含んだ風とは全然違う乾いた風に、本当に外に出たのだという実感がわいた。
「アカリアカリ!この子はダークリンク君ダヨ!とってもマジメなマモノさんなんダヨ」
「……マモノ?」
メランが俺を指さし、浮いている女…アカリに紹介した。
呟かれた声は低く穏やかでメランの高い声とは大違いだが、どこか硬い響きを感じさせた。
「そうそう!水の神殿に引きこもってたのを連れてきたんだヨ」
「……フーン」
アカリ…そう呼ばれた女はチラッと俺を見て、すぐにメランへ向き直った。
「……メラン、こいつ以外に他に何か無かったか?」
「ぜーんぜん。ほんとに空っぽだったヨ」
「そうか…」
そう言った後、アカリは軽く俯いた。
…なんとなく、考え込んでいるような雰囲気が伝わってくる。
「あ、そうそうダークリンク君。この子はアカリ。アタシの友達ダヨ。アタマ良くて頼りになるイイ子なんだヨ」
「…ふーん」
改めて押し黙っている女…アカリを見る。
見た感じだと、小柄な女だ。
おかっぱの頭に、顔全体を覆うような紙が貼り付けてある。
丈の長いローブは破れていて、腰のあたりで帯で止められている。
そして足がない…という見るからに怪しい格好をしている。
「…なぁ、こいつ、ハイリア人なのか?それとも魔物の一種なのか?」
「え?アカリはハイリア人でも、マモノでもないヨ」
「はぁ?」
「だって、ホラ!耳とんがってないモン」
言われた通り覗き込むと、耳は丸い形をしていた。
ハイリア人は神の声を聞くために耳が尖っているとかいないとか。
魔物でもなかったら何なんだ、とますます怪しくなったところで、おもむろにアカリの顔が前を向いた。
「…仕方ない、ハイラル城へムカオウ。ザントとレイドに伝えルゾ」