黄昏時に伸びる影(合同小説)
□謁見
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「あっ、待って」
ふいにレイドが呼び止めようとするも、歩き出したアカリには届かない。
「行っちゃった……」
「どうしたんだ?」
気づいたダークリンクが尋ねるが、それには答えず、右腕に嵌めていた手袋を脱ぐレイド。
「……何やってんだ?」
「……ザントサマからのメイレイだよ…メイレイって何か分かんないけど」
レイドの右腕は真っ黒な影で出来ている。
その掌を下へ向けると、真っ黒な影でできた扉のようなものが浮かび上がり、ぼたぼたと魔物が生み出され、数秒のうちに魔物で溢れかえってしまった。
「なんっだこりゃあ!?」
ダークリンクは軽くパニックに陥る。
いくら水の神殿にいた魔物だとは行っても、時代は変わり目の前に蠢く魔物隊は全てダークリンクの見たことのない魔物達ばかりである上に、それらは全部レイドの掌から生み出されたのだ。
「お前、何モンだよ!? てか、お前らが何モ
ンなんだ!?」
「なにって、マモノをショウカンしただけだよ? ……フフッ、面白いハンノウ」
レイドが笑う。
さっきまであんなに無表情の無感情だったレイドが、少しだけ、ほんの少しだけ嬉しそうに笑う。
なんだよ、そんな顔もできるじゃん
「お前も笑うのな」
「一応ココロのあるマモノだからね」
あははと、今度は満面の笑みを浮かべるレイド。
先ほどとはまるで別人である。
ふと1日に起こった出来事を振り返ってみる。
水の神殿に謎の女、メランが現れ外に出てみれば景色は全くの別世界。
既に百年は経っていると告げられ、
そして出会った2人目の謎の少女アカリ。
そして自称魔物のレイド。
いろいろな事が起こりすぎて、正直ついていくのに疲れた。
「でもそれが楽しいんでしょ?」
心を読み取ったかのようにレイドが顔をのぞきこんでくる。
先程までのぼうっとした掴みにくい印象はなく、無邪気な子どものような表情を見せるレイドに、なんでもいいやという気にさせられてくる。
「楽しいなんて死んでもいってやらねぇ」
皮肉っぽくいうが、楽しそうに笑うレイドの様子を見ると、伝わってないのだろう。
それでもいい気さえしてくる。