結界師

□俺とお前の距離
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俺はその光景を、不自然に思って見ていた。だってよ、あの志々尾が、教室に居るんだぜ?いつもなら、屋上で寝てるって言うのに………。
アイツに一体、何があったんだ?
取り敢えず、話しかけてみるか。


「………なあ志々尾」
「……ん?」
「今日は、屋上には行かないのか?」
「お前こそ」
「いや、期末が近いからさ。授業受けねえと……」
「俺も同じ理由だ」
いや、絶対嘘だろ。お前、勉強出来んのかよ?
「………何だよ」
「だって、珍しくて……」
「悪いのかよ」
「別に悪い訳じゃ………」
そうやって、俺達が話していると、女子の会話が聞こえてきた。
「え、良守って志々尾君と仲良かったのー?」
「てか、志々尾君が誰かと話しているの見たの、初めてかも………」
そんな女子の会話に、志々尾は苛立ったのか。急に立ち上がって教室から出て行った。
「おい、待てよ」
俺はそれを慌てて追いかける。

志々尾が向かった場所は、俺の教室だった。
「………って、え?」
「……………」
「あ、うん。苛立ったのは分かったけど、だからって何で俺の教室?」
「……後5分したら、チャイムが鳴る。それまで居させろ」
「はーい」
へたに反発すると、五月蠅そうだから、此処は素直に受け止める。
で、ちゃっかりと俺の椅子に座ってる訳だ。
「………なあ」
「?」
「志々尾ってさ、その………。今日空いてるか?」
「………いや、空いてない」
「修行?」
こくり、と頷く。

あれから、全然距離が縮まらない。初期に比べたら、随分心を開いてくれたんだけど、まだまだ道のりは遠いようだ。

「じゃあ、いいや」
「………何か用でもあったのか?」
「いや、今日俺の家で一緒に晩飯でもどうかなって思って……」
「………」
絶対断るよな。いつも、断ってるし。
「………行ってやるよ」
「へ?」
「……………今日、亜十羅が来るかもしれないんだ」
あ、あー……。
「なら、来いよ」

距離は縮まった、と考えていいのだろうか……?




学校も終わって。
今日は一緒に帰る事に。

「………あーあ、今日もつっかれた〜」
「……」

ヤバい、会話が無い。てか、続かない。
どうしよう、何を話せば良いのか……………。

「お前さ」
「あん?」
珍しく、志々尾から話しかけられた。
「……………自分が正統継承者として生まれて来た事に関してどう、思った?」
「うーん、………やっぱり、嫌だとは思ったぜ?」
「………」
「だってさ、……人が傷つくだけなんだ」
「……」
「人が傷つかなくても、必ず何かが壊れたり。それに、妖は此処最近昼夜問わず学校に現れるだろ?忙しいし。………普通の生活を、送りたいな」
「そう、か………」

また沈黙が流れる。

正統継承者。たとえそうじゃなくても、俺は墨村家に生まれてしまった。結界師としての仕事を受け継ぐ事は決まっていて。
あーあ、夜はずっと寝ててえのにな〜。

家に帰って来た。
「まあ、今日はゆっくりしていけよな!」
「………あぁ」
さて、と。父さん、どんな顔すんのかな〜。まあ、驚くだろな。


今日のこの会話で、お互いの距離が縮まっていれば、良いんだけどな。






END

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