短編

□君の癖を知っている
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自称学園一アイドルの田村三木ヱ門は、自分の扱う火器に名前をつけて、溺愛する変わり者だ。

それと同じように、三木ヱ門の姉である詩紀も、愛刀に名前をつけて溺愛していた。

似たような2人だが、決定的に違うのは、恋人がいるかいないかというところである。

姉である詩紀には、そんな性格でも恋人がいるのだ。


「詩紀!」


詩紀の恋人は、体育委員会委員長…


「ん、どしたの?」


暴君という渾名を持つ、七松小平太だ。

どういうわけか、小平太が詩紀に惚れて、必死にアプローチした結果、恋人になった。

愛刀にしか興味がない詩紀が?と、彼女をよく知るくのたまは驚いていた。


「えへへ…詩紀が見えたから、来ちゃった!」

「ふーん、そう」


小平太は、見るからに詩紀を好いているが、逆はわかりづらい。

だが、詩紀もちゃんと小平太を好いている。


「あ、小平太、これから暇?」

「え?暇だけど、なんで?」

「今日、実習で町に行った時に、まんじゅう買ってきたんだ。暇なら、一緒に食べたいなぁって」

「食べる!」


小平太は、詩紀が自分を好いてくれていることはわかっているが、あまり彼女からこういうことに誘ってはくれない。

だから、珍しく詩紀から誘ってもらえて、小平太は飛び上がりそうになるほど喜んだ。


「そんなに喜んでもらえるなら、買ってきてよかった」


優しく微笑んだ詩紀に、小平太は抱きつく。


「確かに、お土産は嬉しいけど、一番私が嬉しかったのは…」

「?」

「詩紀が、私と一緒にまんじゅうを食べたいって思ってくれてることなんだからな」

「そ、そう…」


詩紀は、腰に下げた愛刀の柄を撫でた。

これは、詩紀が照れている証拠だ。

小平太は、詩紀を抱き締める力を強くした。


「こ、小平太…早く私の部屋、行こう?まんじゅう、食べるんでしょ?」

「うん!」


抱き締めた詩紀を離して、今度は彼女の手を握った。

すると、詩紀も小さく握り返してくれて、小平太は幸せな気持ちでいっぱいになった。

そして、2人は詩紀の部屋に向かったのだった。
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