短編
□好きな子
1ページ/6ページ
私には、幼馴染みがいる。
その子は、昔からあまり話さなくて、表情も変わらないから、暗い性格だと思われがちだ。
でも、本当は、優しくて、可愛くて、私はその子が大好きだ。
そう自覚したのは、私がまだ7歳の時だった。
私の村には、子どもが結構いて、私は毎日のように彼らと遊んでいた。
日が暮れるまで遊んで、泥だらけになって家に帰ると、母ちゃんに叱られたこともある。
村の子どもは、だいたいが仲良しだった。
だが、私の隣に住む子は、他の子とは少し違っていた。
その子の名前は、詩紀。
詩紀は、あまり遊ばずに、家の手伝いをしていることが多かった。
詩紀も、一緒に遊べばいいのに。
私は、彼女を見るたび、そう思っていた。
そして今年、5歳になった私は、村のはずれにある大きな池の縁に座る詩紀に、話しかけてみることにした。
「なぁ、おまえも、いっしょにあそぼーよ」
その時は、詩紀がどういう考えで遊ばないのか知らなかったから、私はなにも考えずに遊びに誘った。
てっきり、詩紀は頷くものだと思っていた私は、小さく首を振った彼女に目を見開いた。
そして、私は詩紀に詰め寄った。
「なんで!?」
「……、…」
「…なんとかいえよ!」
「……ごめ、ん…」
詩紀は、小さな声で謝った。
それが、異常にムカついた。
何故かは、わからないけれど。
だから私は、黙ってその場を走り去った。
その時は。