短編

□好きな子
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私には、幼馴染みがいる。

その子は、昔からあまり話さなくて、表情も変わらないから、暗い性格だと思われがちだ。

でも、本当は、優しくて、可愛くて、私はその子が大好きだ。

そう自覚したのは、私がまだ7歳の時だった。




私の村には、子どもが結構いて、私は毎日のように彼らと遊んでいた。

日が暮れるまで遊んで、泥だらけになって家に帰ると、母ちゃんに叱られたこともある。

村の子どもは、だいたいが仲良しだった。

だが、私の隣に住む子は、他の子とは少し違っていた。

その子の名前は、詩紀。

詩紀は、あまり遊ばずに、家の手伝いをしていることが多かった。

詩紀も、一緒に遊べばいいのに。

私は、彼女を見るたび、そう思っていた。

そして今年、5歳になった私は、村のはずれにある大きな池の縁に座る詩紀に、話しかけてみることにした。


「なぁ、おまえも、いっしょにあそぼーよ」


その時は、詩紀がどういう考えで遊ばないのか知らなかったから、私はなにも考えずに遊びに誘った。

てっきり、詩紀は頷くものだと思っていた私は、小さく首を振った彼女に目を見開いた。

そして、私は詩紀に詰め寄った。


「なんで!?」

「……、…」

「…なんとかいえよ!」

「……ごめ、ん…」


詩紀は、小さな声で謝った。

それが、異常にムカついた。

何故かは、わからないけれど。

だから私は、黙ってその場を走り去った。

その時は。
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