短編
□声が聞こえる
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私の飼っている犬は、綺麗な青黒い毛並みで、目は大きくて、とても可愛い。
いつも、仕事から帰ってくると、嬉しそうに尻尾を振って、玄関で迎えてくれる。
そんな、可愛い犬の名前は、小平太。
小平太は、犬の中でも特に喜怒哀楽の表現がわかりやすい。
散歩していれば、楽しそうだし、悪いことをして叱れば、悲しそうにする。
叱ったあとに、もう怒ってないよ、と言って優しく撫でてやると、嬉しそうに私に擦りよってくる。
なにより、私が家に彼氏を呼ぶと酷い。
威嚇するように唸り、終いには彼氏に何度も吠えるので、彼氏は嫌がって私の家に来なくなる。
そして、そのうち別れてしまう。
そういうことが何度かあり、私は恋人を作らないことにした。
多分、小平太は嫉妬しているのかもしれない。
そう思うと、可愛くて許してしまうのだ。