短編

□七松っていつも話しかけてくるけど理由がわからない。別にわかりたくもないけど少し気になるというかだってたまにだきついてくるし!好きでもない女に抱きつくもんなの?男ってわけわかんない乙女心をわかってないのよ出会い頭に抱きついてくるなんてどうかしてる!そのせいでありもしない噂がたてられてもううんざりなの!
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寝るときはいつも、月の光が入りやすいように、障子を開けている。

詩紀は、暗闇では眠れないのだ。

新月の日、もしくは曇って月の見えない日は、一晩中行灯をつけて寝ている。

今夜は、新月らしい。

友人が言っていた。

だが、それを聞いたのは夕飯を食べ終えた時で、今日に限って行灯の油がないことに気づいた。

買いに行こうにも、今の時間は外出許可が出ない。

こっそり行こうにも、小松田に見つかって、他の先生方に情報が伝わってしまうだろう。


「…どうしよう」

「なにが?」

「行灯の油がないの。これじゃあ、今夜は……って、七松!?」

「ねぇ、今夜は…?なに?」


自然に、詩紀の独り言に返事が来るものだから、途中まで違和感なく会話をしたが、すんでのところでとどまった。

小平太は、詩紀を見つけるとよく話しかけてくる。

特別、仲が良いわけではないのに。

たまに、抱きついてもくるので、詩紀は少し彼を避けていた。

そして、小平太は詩紀の言葉の先が気になるようで、促してきた。


「べ…別に…なんでもないよ」

「えー、気になるよー。教えて!」

「や、やだ。絶対、教えないからね」

「…あっ!もしかして、真っ暗闇で寝れないとか!」


な、

何故それを…!?

思わず否定出来ないでいると、小平太はにかっと笑って、詩紀に抱きついた。


「かわいーな、詩紀」

「ううううるさい!」

「じゃあさ、今日、一緒に寝よーよ」

「は…。な、なに言ってんの!?駄目に決まってるでしょ!」

「風呂入ったら、詩紀の部屋行くからな!」

「人の話聞きなよ!」

「細かいことは、気にするな!」

「細かくない!」


詩紀は、顔を真っ赤にして怒るが、小平太はにこにこと嬉しそうに笑っていた。

そして、詩紀は小平太から逃げるように部屋に向かった。
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