短編

□七松っていつも話しかけてくるけど理由がわからない。別にわかりたくもないけど少し気になるというかだってたまにだきついてくるし!好きでもない女に抱きつくもんなの?男ってわけわかんない乙女心をわかってないのよ出会い頭に抱きついてくるなんてどうかしてる!そのせいでありもしない噂がたてられてもううんざりなの!
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風呂に入って、髪をある程度乾かしたら、あとはもう寝るだけだ。

詩紀は、布団を敷いて、暗い部屋で不安になっていた。

意を決して、布団に潜り込み、目をかたくつむった。

そうして、どのくらいたったのか。

まったく眠れない。

どうしよう。

詩紀は困った。
これでは、徹夜になってしまうのではないかと。

目をつむりながら、うんうん唸っていると、布団の中に何かが入ってきた。


「やっ……なに…!?」


思わず布団から出ようとすると、腕を掴まれて布団の中に戻された。

そして、その何かが布団から顔を出した。


「詩紀、お待たせ」

「な……七松…?」

「うん。…あれ?詩紀、泣いてる?」

「な、泣いてない!」


涙目を指摘されて、詩紀は恥ずかしくなって、小平太に背を向けた。

すると、小平太はその身体を反転させて、詩紀にこちらを向かせると、そのまま抱き締めた。

温かい体温が、何故か詩紀の抵抗を妨げる。

思わず、すり、と小平太の胸元に頭を擦り付けた。


「……かわいいな」

「…う、うるさい……」

「しき…なぁ、私、詩紀が好きだ」

「えっ…?」


小平太の突然の告白に、詩紀は身体を離した。

すると、小平太をそれを引き止めるように、再び詩紀を抱き締める。


「好き…大好き。だから、一緒にいたいし、触れていたい」

「な…なな、まつ…」

「…なぁ、もっと、触ってもいい?」


小平太の熱っぽい視線から、逃れるように詩紀は目をかたくつむった。

こんな、七松知らない…

こんな、大人っぽい七松なんか…

返事出来ないでいると、かたく閉じているまぶたに、やわらかくて温かいものが触れた。

思わず、目を開くと、小平太の色っぽい唇が、目の前に見えた。


「…我慢、できないよ…詩紀…だって、駄目って言わないから…」

「あ……」


どうしよう…
私、身体が熱い…

七松に触れている箇所が、熱くなって…

でも、その熱さが、気持ちいいなんて…


「詩紀……いい?」


その問いの意味はわかっていた。

わかっていたのに、詩紀は何故か、頷いていた。

それを見た小平太は、嬉しそうに、しかし色っぽく微笑んで、唇を重ねた。

そして、そのまま布団になだれ込むようにして、深くまで絡めていった。

その夜、彼らは真っ暗闇の中、ひとつになったのだった。


















次の日から、詩紀は小平太を避けなくなった。

それどころか、無意識に視線で小平太を探すようになったのだ。

実は、それが小平太の計画通りだったとは、彼以外、誰も知らない。




終わり


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