短編
□矢印は向き合ってますよ
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ボサボサの髪で、なんの手入れもしていないあいつなんか、竹谷なんか好きなはずがなかった。
でも、そんな考えは、とある光景を見て、単純でくのいちに向いていない私はすっかり変わってしまった。
竹谷は、生物委員会の委員長代理を務めていて、毎日のように脱走した毒虫やらなんやらを回収するために、走り回っている。
そのせいで、髪に気を遣う暇もないのだろうし、そもそも本人が、気にならないのだろう。
私は、髪が綺麗な人が好きだ。
だからこそ、最初は、竹谷のボサボサの髪に対して、嫌悪していた。
していたのだが…。
それは、授業が終わり、食堂に向かっていた時のことだ。
私が、廊下を歩いていると、少し向こうに、赤い蛇がにょろにょろ動いているのを見かけた。
その蛇に見覚えがあり、私は近づいた。
「ジュンコ?」
呼びかけると、ジュンコは私に気づいて、しゃーと返事をした。
ジュンコは、本当に頭のいい娘だと思う。
「また、伊賀崎とはぐれたの?」
しゃー…
「一緒に探してあげる」
しゃーっ
ジュンコに手を差し出すと、するすると腕に巻きついた。
しっかり巻きついていることを確認して、私は食堂の方とは別方向に歩き出した。
まずは、飼育小屋に行ってみようかな
そう呟いて、そこを目指した。