短編

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田村家の姉弟は、顔はそこまで似ていないが、中身は酷似している。

ただ、似ているだけで少し違う。
弟の三木ヱ門は、あらゆる火器を愛しているが、姉の詩紀は、ただ一つの刀を愛している。

幼い頃から大事に持ち歩いては、時折話しかけたり、手入れを欠かさずして微笑みかけたり、名前をつけて呼んだりと、周りからは気味悪がられていた。

だが、詩紀はそんなことは、どうでもよかった。

人間なんかといるより、愛刀といる方が幸せだから。

そんな詩紀の考えに心配した親が、あえて同年代の子供がたくさんいる忍術学園に入学させることにした。

入学した当初は、詩紀の変わり者具合に、もちろん周りは引き気味だった。
しかし、嫌でも関わらなければならない場面で彼女と話してみると、なかなか面白い性格で、一年と経たないうちに友人ができた。


「詩紀って、なんでそんなに刀が好きなの?」


一緒に夕ご飯を食べていた友人が、ふと呟いた。

すると、周りの友人も確かに、と呟く。


「なんでって…私にとって常盤(ときわ)は家族だから、かな」


常盤――正しくは、実海常盤(さねのうみときわ)は、詩紀が物心ついた頃にはすでにそばにいた存在だ。

護身用に、といつも持ち歩くうちに、常盤が可愛く見えてきて、今に至るのだ。


「詩紀って、変わってるよねぇ」

「そうかな?」


首をかしげる詩紀に、まわりはみんな頷いていた。
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