短編
□(後)
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夜になった。
詩歩の作ったご飯を食べて、山中にある温泉に行ったらもうあとは歯を磨いて寝るだけだ。
そして、二人とも歯を磨き終えて同じ一枚の布団に二人で潜り込んだ。
二人は、いつも一緒に寝ている。
「詩歩…眠い?」
「うん……」
「そうか…じゃあ、もうおやすみ」
「うん…お、やすみ、なさい…」
珍しく、詩歩から小平太に口づけをした。
頬への口づけだったが、小平太はそれが嬉しくてしばらく眠れなかった。
深夜、詩歩はふと目が覚めた。
そして、ぼやけた頭でそっと布団から抜け出して、小屋の外に出た。
冷えた空気が、詩歩の手足を包み込む。
はぁ、と息を吐くと白くなって空気に溶けていった。
詩歩は、暗い山道を歩いて行った。
月の光りしかない山の中は、足下がよく見えず詩歩は何度も転びかけた。
どうして、詩歩は小屋を出てこんなところを歩いているのか自分でもよくわかっていなかった。
「さむい………」
寝巻き以外何も着ていない詩歩は、だんだん体温を奪われて体が冷たさで動かなくなってきた。
詩歩は、それでも歩いた。