短編
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そんなことがあってから数日。
あの日から、詩紀は小平太に避けられているようだった。
廊下で会って、詩紀が話しかけようとしても、素早くその場を去ってしまう。
詩紀は、あの時、どうしてあんなことをしてしまったのだろう、と後悔していた。
「おい、詩紀。話があるから、少し付き合え」
「……仙くん」
後悔しているところに、なぜか疲れたげな仙くんが話しかけてきて、詩紀は頷いた。
そして、縁側に座り、仙蔵は話し始めた。
「ここ数日、どうも小平太に元気がなくてな。実習の時も調子が出ていないから、やりづらいのだ。詩紀、なにか知らないか」
「……実は」
詩紀は、あの時のことを正直に話した。
すると、仙蔵は大きなため息を吐いた。
「…まだ、気にしているのか」
「……気にしてないつもりだったの。でも…」
「まぁ、小平太も大きい胸が好きらしいからな。思い出すのも、無理はない、か」
詩紀は、慌てて言い直した。
「で、でもね、小平太くんが、嫌なんじゃないの。ただ、違うって、わかってるのに、もし…前みたいなことが起きたら、って、怖くなって…」
「ほう……だそうだ、小平太」
「…えっ!?」
仙蔵が、腰を上げると同時に、小平太が屋根の方から降りてきた。
詩紀が驚いて、なにも言えないでいると、仙蔵は小平太を詩紀のとなりに座らせた。
「詩紀、お前の悩みを正直に話して、小平太の誠意を試すといい」
「えっ、ちょっと、仙くんっ!?」
仙蔵は、綺麗な髪をなびかせて、その場を去っていった。
しばらく、詩紀と小平太のあいだに沈黙が続いたが、それを小平太が破った。
「詩紀…教えてくれないか…詩紀を悩ませてること、全部」
「……うん」
詩紀は、四年生の頃のことを思い出しながら、話し出した。