短編
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詩紀は、三年生で突然成長した胸が、四年生になっても成長し続けていた。
そのことが、詩紀を大いに悩ませていた。
さらしがうまく巻けなくて、胸の大きさが隠しきれないのだ。
普段は、くのたまだけの授業だから、なにも気にならないけど、忍たまと合同の授業は、詩紀にとっては地獄みたいなものだった。
もともと、男子に慣れていないせいもあり、忍たまに苦手意識を持っていた。
そして、ある秋の忍たまとの合同授業で、事件は起こった。
その日の授業内容は、忍たまとくのたまがペアを組み、裏山で罠を避けつつも正午までに頂上を目指す訓練だった。
二人のうちどちらかだけがゴールしても、合格をもらえない上に、先輩が邪魔をして来ることがあるらしい。
詩紀は、不安でたまらなかった。
ペアになった忍たまと、早速裏山の頂上を目指すことになった。
しばらく警戒しながら頂上までの道のりを走っていると、後ろの草むらががさっと音を立てて、そこから六年生が出てきた。
「みーつけた」
詩紀たちを見た六年生は、ニヤリと笑って、追いかけてきた。
慌てて逃げ出すと、詩紀は忍たまの向かった方と別方向に走ってしまい、はぐれてしまった。
その上、六年生は詩紀を追いかけてきていた。
体力のないくのたまを狙ったみたいだった。
詩紀は、必死に逃げていたが、足下に這っていたつたに足をとられ、転んだ。
「さて、鬼ごっこは、終わりかな」
詩紀は、目をぎゅっとつむり、心の中でペアの忍たまに謝っていた。
六年生は、捕まえようとした詩紀の身体を舐めるように見て、ニヤリと笑った。
そして、詩紀に覆い被さり、詩紀の上着を剥ぎ取った。
上半身が、肌着のみになり、詩紀は目を見開く。
「えっ…!?」
詩紀は、驚いて六年生を見て、怖くなって自分の身体を隠すように抱き締める。
だが、六年生は詩紀の腕を片手で掴みあげて、上の方で固定した。
「や、やめて、はなしてくださっ…」
詩紀が抵抗すると、六年生は肌着越しに、隠しきれていない大きい胸を鷲掴んだ。
「俺さぁ、おっきいおっぱいって、大好きなんだよ」
「ゃ…やだぁ…やめてくださいっ…」
「二つも年下なのに、こんなおっきいなんて、最高だね」
「やだ…助けて…誰か…」
そして、六年生が、詩紀の肌着に手をかけようとした時、草むらから見慣れた桃色の装束が飛び出して、六年生を蹴り飛ばした。
それは、くのたまの六年生で、彼女は忍たまに馬乗りになると、顔面を思い切り殴っていた。
「よくも可愛い後輩に手を出してくれたわね。この御礼は、しっかりしてあげないと」
くのたまの六年生は、冷酷に微笑み、忍たまの六年生を縄でぐるぐる巻きにした。
そして、詩紀のもとに駆け寄り、ぎゅっと抱き締めた。
「怖かったわね、でも、もう大丈夫よ。あれは、退学させるからね」
その優しいぬくもりに安心して、詩紀は泣き出してしまった。
無理もない。
未遂とはいえ、犯されかけたのだから。
その日から、詩紀は徹底して胸を隠すようになった。