短編
□真愛
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詩紀と小平太が恋人になった経緯は、とても軽いものだった。
「私と、付き合ってみるか?」
たまたま、裏々山で鍛錬していたら、小平太も鍛錬していたようで、話しかけてきた。
休憩がてら話していると、いつの間にか恋愛の話になって、詩紀が恋人がいたことないと言うと、小平太はなんとなしに呟いてきたのだ。
詩紀が驚きで固まっていると、小平太はじっと詩歩を見つめてきた。
気づいたら、詩紀は小さく頷いていて、小平太と付き合うことになったのだ。
だというのに、小平太は、恋愛に冷めている。
デートなんてしたことないし、手を繋いだこともない。
たまに廊下で目が合うくらいで、詩紀はどうして付き合ったのだろうと、疑問に思っていた。
詩紀も、恋人が出来たことなんてないし、さらに戦忍希望だから、男を誘惑することが苦手なため、自ら甘えにいくことも出来ずに、もやもやしていた。
そのことを友人に言うと、怪訝な顔をされた。
「あんた、それ騙されてんじゃないの?」
「騙される?」
「というか、からかわれてるとか」
「…あれは、冗談だったってこと?」
「わかんないけど」
詩紀は、そうなのかと思うと、ぎゅうと胸が詰まった。
悲しそうな表情の詩紀を見かねて、友人が提案した。
「じゃあさ、こういうのはどう?」