短編

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お風呂あがりに、小平太はこっそりと詩紀の部屋の天井裏に忍び込んだ。

そして、そっと部屋の中を覗くと、詩紀がゆっくりと髪を梳かしていた。

ちょうど、詩紀もお風呂あがりだったのか、少し頬が火照っており、可愛いと思った。

小平太は、小さく天井を叩いて、声をかけた。

「詩紀…」

「…小平太?」

ぱっと天井に顔を向けた詩紀は、小平太が天井裏にいることに気づいて、柔らかく微笑んだ。

「そんなとこにいないで、降りてきて」

「うん」

小平太は、すとんと音少なく部屋に降りた。

そして、詩紀にぎゅうと抱きつく。

忍たまの6年生は、ここ3日間野外実習があり、まったく会えなかったのだ。

たかが3日、されど3日。

3日間会えなかった小平太は、完全に詩紀不足だった。

「はぁー…詩歩の匂い…」

「もう、小平太ったら、変態みたいだよ」

「詩紀にだけだ」

「否定はしないんだね」

小平太は、のそのそと詩紀の胸に顔を埋める。

くすぐったそうに身をよじる詩紀だが、嫌がりはしないので、小平太は素直にぬくもりを甘受した。

「詩紀は柔らかくて、あったかいなぁ」

「ふふ…なんだか、子供みたい」

「むっ、子供じゃないぞ」

「わかってるよ」

そう言いつつ、くすくすと笑っているものだから、小平太はムッとして、詩紀の背中をツツっと撫でる。

そのやらしい撫で方に、詩紀は小さく声をもらした。

「ん…」

「子供は、こんな触り方しないだろ?」

「う、うん…そう、だね…」

小平太は、必死に声を抑える詩紀に、ムラムラしてきて、思わず目の前の胸に口づけを落とした。

少しはだけた胸が、小平太を誘惑しているようにしか思えなかったのだ。

「や、ちょっと…小平太、だ、だめ…」

「んー…もーちょっと…」

詩紀は慌てて小平太から離れようとするが、力でかなうはずもなく、されるがままに胸や鎖骨あたりにたくさん口づけられた。

「も……やめ…てぇ…」

真っ赤になって懇願する詩紀は、あきらかに小平太を誘っていた。

と思っているのは小平太だけで、実際詩紀にはそんなつもりは微塵もなかったのだ。

小平太は、詩紀を優しく押し倒す。

そして、熱っぽい視線を向けて、詩紀に問いかけた。

「なぁ…いい?」

「えっ…」

「だめ?」

耳に口づけながら、低い声で囁かれたら、耳が弱い詩紀はもう逆らえない。

身体を小さく震わせながら、詩紀は小平太の抱き着くように首に手をまわして、涙声で呟いた。

「久しぶりだから…やさしく、ね…」

カタっ、と小平太の理性の箍が外れる音が聞こえた。
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