短編

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小平太に深く愛され、気がついたら眠っていたようだった。

外から小鳥の鳴き声が聞こえて、もう朝なのだと気付いた。

布団でまどろみながら、となりのぬくもりに詩紀は擦り寄る。

こんな無防備に寝ている小平太を見られるのは自分だけなのだと思うと、なんだか嬉しい。

お互いに裸で寝ていたようだけど、それがまた温かくて、悪くないとも思ってしまう。

「…やさしくして、って言ったのにね」

そんな言葉が、ムラムラしていた彼に通用するはずもないけど、言ってみたのはちょっとした誘惑だったのだ。

そういう言葉に、小平太が弱いのを知っているからこそだ。

「…しき…おきたのか…」

「うん、おはよう」

「…おはよ…」

小平太は、ぎゅーと詩紀を抱き締める。

詩紀の柔らかい胸が小平太の胸板に当たっても、寝起きの彼はムラムラしない。

彼は、朝にも弱いのだ。

「しき…きのうの、あれ…わざと言ったんだろう」

「あれ、ばれてたの?」

「…わかるよ、私の理性が飛ぶってわかってて、ああ言うんだから、詩紀はくの一に向いてる」

「…小平太にだけだよ、あんな風なの」

どうやら、昨夜の発言の意図は、小平太にはバレバレだった。

であるにもかかわらず、小平太は詩紀の誘惑には勝てなかったらしい。

それが、なんだか嬉しくもあるし、可愛くもある。

「詩紀には、かなわないなぁ」

そう呟いた小平太は、詩紀の首元をすんすんと嗅いでいた。

「…ほんと、かなわない」

諦めたように、でも愛おしそうに、確かめるような声音で、もう一度呟いた。

「もう…そろそろ、起きよう?」

「そーだな」

ぐっと身体を起こした小平太は、詩紀に背を向けて着物を着る。

詩紀も小平太に背を向けて着物を着た。

今日は休日だから、ゆっくりできる。

そう考えた小平太は着替えると、詩紀も着替えたことを確認して、再び布団に寝転がった。

「なぁ…やっぱり、もーちょっとだけさ…寝よ?」

「…しょうがないなぁ、小平太はお疲れだもんね」

「…うん、そうなんだよー」

小平太は、詩紀の胸に顔を埋めて目を瞑ると、すぐに眠ってしまった。

「…可愛い寝顔」

詩紀も、目を瞑って眠りについた。
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