短編
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二度寝してから小平太が次に目が覚めた時は、もう日が高く昇っていた。
ふと、横で丸くなって眠る詩紀を見ると、疲れてぐったりした気持ちも癒された。
愛おしい気持ちが止められなくて、小平太は眠る詩紀に何度も口付けた。
そうすると、詩紀は小さく唸りながら、そっと目を開いた。
そして、目の前で小平太が自分に口付けているとわかると、自らも小平太に甘える。
しばらくして唇を離すと、お互いに色っぽさが溢れてしまって、二人は苦笑いした。
「…詩紀と接吻すると、駄目だな…色っぽくて…どうにかなりそうだ…」
「私だって、小平太のそういう顔には弱いのに…」
「お互いさまだな」
「うん」
そうして二人は布団から起き上がると、町へ出掛けることにした。
せっかくの休みを寝て過ごすのは勿体無いとどちらともなく言ったからだ。
出掛ける準備をするからと、小平太はいったん部屋に戻った。
詩紀も顔を洗って、外行きの着物に着替えて、髪を整えた。
そして、枕元に置いてある常盤をひと撫ですると、立ち上がった。
「常盤、行ってくるね。帰ったら、ちゃんとお手入れしてあげるね」
そう言って、詩紀は小平太との待ち合わせの場所に向かった。
正門で待ち合わせた二人は、手を繋いで町へ向かった。
「詩紀、町に着いたら、まずは昼飯を食おう。私、お腹空いちゃったよ」
「私も。おうどん食べたいね」
「そうだなぁ…あっ、そういえば、最近町に美味しいうどん屋ができたってしんべヱが言ってた!そこに行こう!」
「うん、そうだね」
のんびり歩きながら、二人はうどん屋に向かう。
こんな穏やかな日も、たまには悪くない。
そう思って、小平太は詩紀と繋いでいた手を一度離して、今度は指を絡めた。
いわゆる恋人繋ぎというもので、小平太はこうすると詩紀の手の温もりを感じられて、普通に繋ぐより、この繋ぎ方が好きなのだ。
そして、うどん屋に着いて、二人はお互いに好きなものを食べて、腹ごしらえをした。
「美味しかったね」
「そうだなぁ、やっぱりしんべヱの食べ物の話はあてになる」
感心したように言う小平太に、詩紀も頷く。
「じゃあ、次は小平太の行きたいとこに行こう?」
「いいのか?」
「うん、いつも私の行きたいとこに付き合ってもらってるからね」
「好きで行くんだけどなぁ、まあ、詩紀がそう言うなら」
小平太は、詩紀の手を引いて歩き出した。