長編
□8
1ページ/4ページ
今日、新野が傷の様子を見てくれる日で、彼の許可が下りれば部屋に戻ってもいいことになっていた。
もうほとんど傷は塞がっているし、きっと新野も霧花の気持ちを知っているから、戻ってもいいと言ってくれるだろうと思っていた。
霧花はそわそわしながら新野が来るのを待って、意味もなく天井の木目を数えていると、襖がすっと開いて新野が部屋に入ってきた。
「失礼しますよ」
「は、はい」
新野は優しく微笑んで、霧花の前に座る。
「じゃあ、さっそく傷を見せてくれますか?」
「はい」
霧花は新野に傷を見せると、彼はうんと頷いて再び微笑んだ。
「もう大丈夫だね、傷は塞がっているし、化膿した様子もない。動かして痛みはないかい?」
「はい、痛くないです」
「うん、それなら部屋に戻っても大丈夫。今までよく頑張ったね」
「は、はいっ、ありがとうございました!」
霧花は床に手をついて頭を下げた。
すると、新野は穏やかに笑って霧花の頭を撫でた。
「またなにかあったら、私でも保健委員会の子でもいいから相談しにおいで」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、外に友だちが待っていたから、行ってあげなさい」
「はい」
霧花は、立ち上がりもう一度新野に頭を下げると、部屋を出た。
そして、部屋の外で待っていた人物に笑顔で話しかけた。