短編

□甘い罠
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「ねぇ、詩紀…聞いてる?」


突然だが、今、私は小平太の家に来ている。

小平太が、どうしても来て欲しいと言うから、いるわけだが、考え事をしていたら、こいつの話を聞くことを疎かにしてしまっていた。


「ん?あぁ、聞いてる聞いてる」

「…嘘。詩紀がまばたきを三回連続でする時は、嘘ついてる証拠だもん」


小平太、お前私のこと好き過ぎだろ。

私より私のこと知ってるよこいつ。


「だから!詩紀、明日空いてる?って聞いたの!」

「あ、あぁ、明日ねぇ。明日は……うん、なんもないけど」


私の答えに、心底嬉しそうに笑う小平太は、やっぱり可愛いと思う。


「そっかぁ!じゃあさ、今日は私の家に泊まってよ!たまには、がーるずとーくしよーよ!」

「えぇー…」


めんどくせぇよー

うちの幼馴染みめんどくせぇよー


「ねっ!お願いっ!」

「…わかった。わかったから、覆い被さらないで」


お願いっ!とか言いながら、小平太は私を押し倒して覆い被さって来るもんだから、少し焦った。

なにされるか分かったもんじゃねぇなぁ。

まったく!
可愛いからって、なにやっても許されると思うなよ!
可愛いけど!


「しきー、お風呂一緒にはいろーねー」


なに言っとんやお前。


「えぇー、そんな子供じゃないんだから…」


笑いながら、小平太の言葉を受け流した時、彼女の顔つきが変わった。


「………ねぇ…詩紀さ…最近、私に対して、冷たくなったよね」

「ゑ」


なんというか、冷えたような感じの重たい空気だ。


「………ねぇ、詩紀?運命共同体って言葉…知ってる?」

「は…?うんめい…なに?」


小平太は、綺麗に微笑んで、私を押し倒した。

腕を押さえつけられて、逃げられない。


「あのね…ある組織や団体に所属する人たちが、繁栄する時も衰退する時も運命を共にするっていう意味なの」

「う、うん…?」


小平太の伝えたいことが、わからない。

何が言いたいの?


「私と、詩紀は…まさにソレだと思うの。生きるも死ぬも、ずっと一緒」

「な、なに言ってんの…?」

「だからね、詩紀…私たち、結婚するべきだと思わない?」

「は…結婚って…女同士なのに…」


もうわけがわからなくて、呆然としていると、小平太と私の唇が重なった。

小平太は、器用に私の唇をこじ開けて、舌を絡め捕らえた。


「んっ……ふぁ……」


息が苦しくなって、意識が朦朧とし始めた頃、ようやく唇が離れた。


「だって…こんなに愛してるんだもん。女同士とか、関係ないよ」

「はぁ……はぁ……」

「ふふ。可愛い顔」


そう言って、小平太は私の服を脱がしていく。

抵抗しようとするが、小平太の力が思いのほか強くて、なんの意味もなかった。

そして、上半身を裸にされて、私は恥ずかしくなって、少し涙があふれた。


「こへいた……おねがい…やめて…」

「…詩紀……ごめんね、好きだよ」


私のお願いは、聞き入れてもらえず、小平太は私の胸元に口づけを落とした。

小平太の口づけた私の胸元には、赤い痕がたくさんついていた。


「ふふ…私のものっていう、シルシだよ」


こんなの…おかしいよ

女同士なのに、こんなことして…


「詩紀……大好き」


こんなことされて…嫌だって思っていない私も、どうかしてる

小平太に、大好きって言われて、どきどきしてるなんて…

そうして、私は小平太という甘い罠に、堕ちていく。




終わり
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