短編
□君に私の全てを捧ぐ
1ページ/2ページ
くのいち教室には、上級生が少ない。
特に、今年は少なく、上級生は詩紀と小平太、たったの2人しかいない。
上級生に上がるにつれて、行儀見習いの子は実家に帰るので、つまりくのいち志望は、残った2人ということだ。
2人は、6年間ずっと同室だったので、特に仲が良かった。
そして、今は授業が終わり、夕飯もお風呂も済ませたので、あとは寝るだけだと、部屋でくつろいでいるところだった。
「詩紀、宿題教えて」
小平太は、甘えるように詩紀の腕に手を絡めた。
「また?小平太、この前習ったじゃない」
「だって…わからないんだもん」
「…仕方ないなぁ、あのね、これは…」
なんだかんだ言って、詩紀は小平太に甘いのだ。
だから、詩紀は優しく小平太に勉強を教え始めた。
詩紀は勉強が得意で、小平太は実技が得意だ。
正反対な2人だが、だからこそお互いの足りないところを補って、今までを過ごしてきたのだろう。
どちらかというと、甘えん坊な小平太は、いつも詩紀にべったりだ。
忍たまが、詩紀に近づこうとすると、威嚇するように睨みつける。
「そっかぁ、そういうことかぁ…ありがとう、詩紀」
「わかったなら、いいよ。教えた甲斐があるからね」
詩紀も詩紀で、小平太には甘いから、頼られると断れないのだ。
そして、勉強を教えたあとに、ちゅ、と可愛い音を立てて、小平太が詩紀の頬に口づけを落とすのは、もう恒例だ。
初めのころは、詩紀は気恥ずかしくて抵抗していたが、今ではそんなことはしない。
「詩紀、いつもありがとう」
「いいよ。私も教えるの、好きだし」
「ふぅん……ねぇ、詩紀」
「ん?なぁに?」
小平太は、曖昧に頷いた後、真剣な目つきで詩紀を見つめた。
そして、詩紀の肩に寄りかかって、手を絡めた。