短編

□君に私の全てを捧ぐ
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くのいち教室には、上級生が少ない。

特に、今年は少なく、上級生は詩紀と小平太、たったの2人しかいない。

上級生に上がるにつれて、行儀見習いの子は実家に帰るので、つまりくのいち志望は、残った2人ということだ。

2人は、6年間ずっと同室だったので、特に仲が良かった。

そして、今は授業が終わり、夕飯もお風呂も済ませたので、あとは寝るだけだと、部屋でくつろいでいるところだった。


「詩紀、宿題教えて」


小平太は、甘えるように詩紀の腕に手を絡めた。


「また?小平太、この前習ったじゃない」

「だって…わからないんだもん」

「…仕方ないなぁ、あのね、これは…」


なんだかんだ言って、詩紀は小平太に甘いのだ。

だから、詩紀は優しく小平太に勉強を教え始めた。

詩紀は勉強が得意で、小平太は実技が得意だ。

正反対な2人だが、だからこそお互いの足りないところを補って、今までを過ごしてきたのだろう。

どちらかというと、甘えん坊な小平太は、いつも詩紀にべったりだ。

忍たまが、詩紀に近づこうとすると、威嚇するように睨みつける。


「そっかぁ、そういうことかぁ…ありがとう、詩紀」

「わかったなら、いいよ。教えた甲斐があるからね」


詩紀も詩紀で、小平太には甘いから、頼られると断れないのだ。

そして、勉強を教えたあとに、ちゅ、と可愛い音を立てて、小平太が詩紀の頬に口づけを落とすのは、もう恒例だ。

初めのころは、詩紀は気恥ずかしくて抵抗していたが、今ではそんなことはしない。


「詩紀、いつもありがとう」

「いいよ。私も教えるの、好きだし」

「ふぅん……ねぇ、詩紀」

「ん?なぁに?」


小平太は、曖昧に頷いた後、真剣な目つきで詩紀を見つめた。

そして、詩紀の肩に寄りかかって、手を絡めた。
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