短編
□振り返った君の顔は紅かった
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クラスメートの三山くんは、とてもモテる。
いつも、誰かが三山くんのことを見つめていて、積極的な子は話しかけている。
三山くんが、モテる理由は、多分、物静かで落ち着いていて、でも暗いわけでもない。
それに、とても優しくて、運動ができる。
勉強は…少し苦手みたいだけど、そのギャップがいい、みたいな。
かくいう私も、望みのない恋をしているひとりである。
きっかけは、私が日直で、たまたまクラスメートのノート提出を任された時のことだ。
私は普段、男子には女子っぽくない、男友達みたいだとよく言われていたので、重たいノートの山を運ぶの手伝って、と言えずにいた。
仕方ないから、クラスメートがいなくなってから、何度か往復しよう、と思ってしばらく待っていると、あまり話したことのない男子に話しかけられた。
それが、三山くんだった。
「それ、運ぶの手伝う」
「えっ、大丈夫だよ」
突然の申し出に驚きつつも、まわりの男子に何か言われるのが嫌で、断ってしまった。
私は、少し申し訳なくなった。
「そうだよー、七松なら、そんくらい余裕だろ?」
「う、ん。余裕だよ」
まわりの男子が、茶化すように聞いてきたので、私はそれに頷いた。
だけど、三山くんはなにも言わずに、ノートの山を半分以上持った。
私は、慌てて三山くんに首を振る。
「ほ、本当に、大丈夫だからっ…」
「…いくら力持ちでも、女の子ひとりでこの量は大変だろ」
私は、今までにそんな風に言ってくれた人に、会ったことがなかった。
私は、思っていたよりも、女の子扱いされたのが嬉しくて、それ以上断ることが出来なかった。
その日から、私は三山くんに恋してしまった。