短編
□いっしょにいたい
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小平を助けて、さらに仙火と再会(?)してから、彼女らとつるむことが多くなった。
同級生に友達がいないわけではないのだけど、仙火か小平がよく詩紀の教室に来ては連行していくので友達は最近のんきにいってらっしゃーい、なんて言って手を振ってくる始末だ。
今日はお昼になると仙火がやって来て、強制的に連れていかれた。
「詩紀、その姿になってから女子力ってやつは磨いてるのか?」
「もちろんです!毎日トリートメントしてますし、お肌だってニキビとかできないようにちゃんとケアしてますよ!」
「…ほう?トリートメントしてるのか、その髪で?」
仙火は詩紀のキシキシの髪を掴むと、バカにしたように笑った。
「ち、違います!これは、か、カツラで…ほんとの髪の毛はこの下なんです」
「なるほどな、今度見せてみろ」
「え、いや、仙蔵先輩ほど綺麗じゃないですけど…」
そう言うと仙火は、はん、と鼻で笑った。
「何を言う、私の髪に敵う奴がいるなんて思ってないから安心しろ」
「…はい、そうでした」
そんな風に会話している様子が、まわりからは楽しそうに見えたのだろう。
数日後、仙火と詩紀が付き合っていると噂が流れていた。
当然、小平たちもその噂を耳にしているわけで。
お昼休みはもちろん質問された。
「三山、仙火と付き合ってるんだって?」
「えっ、あー、それは…」
伊作に問われて、違います、そう言おうとしたら制服の裾を小さく引かれて、そちらを向くと表情の読めない小平が詩紀をじっと見ていた。
なにか言いたそうにしている小平は、一度目をそらして口を開く。
「…ほんとに、仙ちゃんと付き合ってるの?」
「だ、だからそれは…」
「い、いやだよ…」
「えっ」
小さな呟きのあと小平は大きい瞳から涙をぽろぽろ流して、眉を切なそうにハの字にさせた。
「な、七松先輩…」
「あっ…な、なんで…おかしいな…理由はわからないけど…涙が、止まらないよ…」
目を擦ろうとした小平の手を掴み、詩紀は小平の涙を優しく指ですくう。
「先輩…俺、仙蔵先輩とは付き合ってないです」
「…ほんとに?」
「はい、俺、昔から仙蔵先輩を知ってたので、女だと思ってないですし」
「そ、そっか…よかった…」
ようやく小平に笑顔が戻ったので、詩紀含めてまわりは安心したように肩の力を抜いた。
すると、仙火がからかうように小さく笑っていた。
「罪な男だな、詩紀」
「えっ」
「それより詩紀、私を女だと思ってないだと?失礼なやつだ」
「あ、そ、それは…そのぉ…」
だって昔(忍たま)の面影ありすぎて、というかそのまますぎて男って言われても違和感ないんですもん
とは言えずに口ごもる。
もごもご言っていると小平に抱き着かれた。
「まぁまぁ!仙ちゃん、細かいことは気にするなって!」
「調子のいいやつめ」
そう言った仙火は優しい眼差しで、やはり本当は優しいところは昔と変わってないのだなぁ、と詩紀は思った。
いっしょにいたい
その気持ちも変わらない。
続く