短編

□だいすき、今は言えない
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「ところで三山はさ、なんだかんだで私たちとご飯食べてくれるけど…もしかして目当ての人でもいるの?」

お昼ご飯を食べているとき、伊作が唐突に言い出した。

思わずぽかんと口を開けて訝しげに伊作を見る。

確かに目当てはいるけど…
何故唐突に…

ま、まさか善法寺先輩、ほんとは記憶があるんじゃ…

「いさくせんぱい」

試しにそう呼んでみるが彼女は不思議そうに首を傾げた。

「え?誰だって?」

「いやなんでもないです目当てなんていません」

「そっかぁ…あっ、じゃあ私たち6人のなかだったら、誰が好み?」

なんでこんな恋ばな好きなの?
女の子だから?
女の子だからなの?

というかすごい困る質問…

答えに困っていると、視線を感じてそちらを見ると小平が詩紀をじっと見つめていた。

なにか期待するような、でも不安そうな視線。

それに気づいたとき、詩紀は正直に言ってもいいかと思い口を開く。

「そうですね、この6人のなかで言うなら七松先輩ですかね」

「へぇ!どんなところが好みなの?」

「え、うーんと…まず目が丸くて可愛いところ、明るいところ、細かいことは気にしないところ、髪質も好みだし、肌も綺麗で声も可愛い、あとはー…」

「いやいや待って、それ好みというか好きなんじゃないの?」

「えっ………………まさかぁ」

しまった、正直に言いすぎた。

ドン引きされていないかと小平をちらりと盗み見ると、彼女は顔を真っ赤にさせてうつむいていた。

引かれてはいなさそうな反応なので、詩紀はほっと息を吐く。

すると仙火が詩紀の肩に腕を置いて、少しバカにしたように鼻で笑う。

「伊作、こいつの好みは偏ってるんだ」

「それがたまたま小平とマッチしたってこと?」

「そのようだな、それに、なによりこいつにはもうすでに心に決めた相手がいる」

「えっ」

それを聞いてまわりは驚いたように声をあげたが、一番驚いているのは小平だった。

そして、ショックを受けたように小平は顔を青ざめさせる。

「そ、うなのか…」

「……まぁ、そいつは詩紀のことなど覚えていないらしいがな」

「ちょ、仙蔵先輩…」

「事実だろう」

「…そ、うですけど…」

なにも反論できずに口をつぐむと、小平が詩紀の腕に抱きついて必死な様子で見上げてきた。

「そ、そんな人、諦めちゃえばいいっ」

「えっ」

「三山にはっ…もっと三山を想ってくれる人が…いるはずだよ!だからっ…」

小平が詩紀を思ってそう言ってくれるのは嬉しかった。

だけど、詩紀はそっと小平の口を指で塞ぐ。

「…七松先輩、ありがとうございます。でも…俺には諦めるなんてできないです。ずっと昔から…その人だけを想ってきたから…」

「そ…か…」

小平は悲しそうな表情で詩紀を見つめると、詩紀はとても愛しい人を見るような眼差しで小平を見つめ返した。

その眼差しの意味が、小平にはまだわからなかった。


だいすき、今は言えない


でも、いつか貴方に伝えたいのです。


続く
 

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