企画小説


□紅一点
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『紅一点』



優梨は浦飯チーム唯一の女性。
……と、口で言ってしまえばそれまでだけど、そこには様々な苦労が付きまとう。


【case1】

「おい、早く来いって」
「う〜〜〜〜!」

霊界探偵に下された指令により、とある洞窟へやって来た一行。なんでも『この奥に巣くう妖魔を退治せよ』とのこと。
ところがその途中で道を川に遮られる。足場になりそうなものも無く、水の中を渡るしかない。

「それほど深くないから大丈夫だよ。優梨が入っても腰が浸かるくらいまでだ」
(それだとマズイんだよ〜〜!!)
「流れも激しくねェし、カナヅチの誰かさんでも充分渡れるぜ」
「うるさいバラすな!! 第一、そういう問題じゃないし!」
「じゃどういう問題だよ?」
(聞くな〜〜!!)

『水に浸かる』
それだけでもう大問題。

「……ねぇ、私ここで待っててもいい?」
「おいおい、どうしたんだよ? アンタがンなこと言うなんて珍しいな」
「泳げない程度でビビんなよな」
「だから違うってば!」
「体調でも悪いのか? 何か薬あっただろうか……」
「い、い、い、いいってばぁ〜〜!!」

頼むから放っておいてくれ。
そんな願いも虚しく、飛影が爆弾投下。

「フン、間抜けめ。油断してどこかのザコにやられたか」
「は? 何の話?」
「とぼけるな。傷を負ったのだろう?」
「そうなのか!?」
「何故言わないんだ! すぐに薬草を……!」
「ちょ、ちょっと待って! 別に怪我なんか……ハッ!」

何かに気づいた。
しかし、時既に遅し。

「誤魔化せると思うなよ。お前、今日はずっと血の匂いがして……」

ドゴッ!

「〜〜何をする!?」
「うるさいうるさいうるさい! 余計なこと言うなぁぁぁ〜〜!!」

優梨と飛影、取っ組み合い。
他の三人は事情を察する。

「あ〜〜なんか、悪かったな、うん」
「っつーか、そうならそうと言えよ」
「言えるか!!」
「優梨は、ここで待ってるといいよ」

結局、妖魔は男四人で退治しましたとさ。


「……おい、だから何故オレが殴られねばならんのだ!?」
「デリバリーが足りねェからだろ」
「桑原くん、デリカシーです」
「ま、アイツも女だからな」


【case2】

任務で遠出(垂金の別荘並みの山奥とか)して、まさかの野宿になんてなろうものならさぁ大変。

「……お風呂入りたい……」
「確かに女性にはツラいかもね」
「無ェんだからしゃーねぇだろ」
「わかってるよぅ……あ」
「今度はなんだ?」
「化粧水持ってくるの忘れた!」
「「「…………」」」
「うぁ〜〜肌荒れちゃうよ〜!」
「アホらし」
「アホじゃない! 大事なこと!!」

男たちはわかってくれない。

「体だけでも拭きたいなぁ」
「川ならあったよな。洗ってくるか?」
「そうしよっかな」

虫も多いし汗もかいた。
このままじゃ落ち着かない。
タオルを持って立ち上がる優梨はじぃ〜〜っと周りを見渡して、

「……覗くなよ」
「お前な……オレらをなんだと思ってんだ!」
「他のみんなはともかく、幽助は信用出来ない。どスケベだもん!」
「あんだと〜〜!?」
「まあまあ」

そんなこんなで川まで出向き、ガッチガチに結界張りまくって警備を固めた状態で水浴び開始。

一方の幽助は、もちろんノゾキはしないんだけどやけに意識してチラチラ川の方角を見たり。

「……行かせませんからね」
「そういうオメーこそ、気になってんじゃねぇのか?」
「あいにくオレはそのテの事に不自由はしていない」
「オレだって、別に体がどうのってワケじゃねェよ!」
「……へぇ……」

余裕ありげな蔵馬に、幽助カチン。

「わざわざ覗かなくたって、オレは一緒に着替えたこともあるし」

幽助の反論に、蔵馬もカチン。

「どうせ子供の頃の話だろう」
「へっ、ヒガミか。小五くらいまでは同じベッドで寝たりもしてたな〜」

怪しい雲行き。
桑原、バトル勃発を恐れて木陰に退避。

「そもそもアイツ、大して出るとこ出てねェから見応え無ェぞ」
「オレは別にそんなの気にしないけどね。胸は大きさじゃない。体なんて、要は相性だし」
「オレだって気にしてねェよ! つーか今サラッと言ったよな。オメーのがよっぽどどスケベじゃねーか!」
「男なんてそんなものだろう」
「それ、優梨の前で言ってみろよ」
「断る」
「……ねぇ、何の話?」

静かなのに威圧的な声。ゾワッと寒気が。

「……何の話、してるワケ?」
「や、その、なんだ……」
「た、ただの世間話だよ」
「へぇ……私の体の話は世間話レベルなんだ」

聞・か・れ・て・た〜〜!!

「出るとこ出てなくて悪かったね!!」
「いやだから……っ」
「優梨、オレはフォローしたつもりで……」
「小さいって言ってるようなモンじゃん!」
「……すいません」


「貴様らうるさいぞ! 寝られんだろう!!」

飛影、ご立腹。


【case3】

暗黒武術会の会場には医務室があった。大会での負傷者を運び込む訳だから、会場の中でもより闘技場に近い位置に設けられている……と思う。
なら、他の施設はどうだろう?
あれだけ広い会場なんだから、VIPルームや選手の控え室以外にもいろいろあるハズ。

例えば、更衣室。
控え室だけだと、もし着替えたくなった時、浦飯チーム(と五連邪チーム)は大変だ。

「ふぃ〜あっちぃな」
「動き回ったから余計だな。上脱ごうぜ」
「…………」
「二人とも、エリカがいるんですから」
「気にしなきゃいいだけだろ。なんなら一緒に脱ぐか?」

バキッ!

「いってェな、何しやがる!」
「セクハラ反対!」

けどもお構いなしな幽助・桑原に続き、飛影も脱ぎ出す。

「おい、"せんたっき"はどこだ?」
「"洗濯機"。ちゃんと教えたでしょう?」
「だから"せんたっき"だろう。そう言っている」
「"洗濯機"」
「"せんたっき"」
「"洗濯機"!」
「"せんたっき"!」
「"せ・ん・た・く・き"!!」
「しつこい女だな……さっきから何度言わせる気だ!?」
「言えてない!」
「なんでもいいから洗え!」
「知りません! ここはセルフなの。自分でなんとかしなさい!!」

バタン!!

「……出てっちまった。あ〜あ、飛影がエリカを怒らせた」
「何故オレだ!? 貴様らだろう!」
「汗臭ぇ服押し付けようとしたからだろ」
「そんなのはいつもの事だ」
「うわ、コイツぜってー亭主関白主義だ」
「言っておきますけど、多分あなたたち全員が原因ですよ?」
「そういや蔵馬だけ脱いでねェな」
「そりゃアレだろ。実は……ってヤツ」

ニヤニヤ。

「……何が言いたい?」

なんか超怖い。ビビる幽桑コンビ。

「……や、なんでもないッスよ」
「嘘を吐くな」
「ホントホント、別にブラジャーしてるんじゃねぇかとか思ってないッス!」
「そうそう、下は付いてないんじゃねぇかとか疑ってないッス!」

……ハッ! しまった!!

「あ、あの〜……蔵馬、さん?」
「…………」
「すんません……なんか、髪の毛ざわざわしてますよー……って、まさか!」

ぱあぁぁ……妖狐様、降臨!

「さあ、お仕置きの時間だ」
「「ひいぃぃぃ〜〜〜〜!!」」

控え室に血の雨が降る。
やっぱり更衣室、要るな。



ある場合のパターンは……

「お。浦飯、そのジーンズいいな」
「だろ? 古着屋で見つけてよ、即買い」
「フン、赤の他人のおさがりか」
「へっ、ガキにはわかんねーんだろ。ダメージジーンズは男のロマンだぜ!」

ガチャ

「お前たち、さっさと着替えて出ていけ。次はオレたちの番だ」
「……鴉……!」
「ああ、お前は別に居ても良いぞ蔵馬。なんならオレがめかしつけてやろうか?」
「……ふざけるな」

ゴゴゴゴゴ……!(何かのオーラ音)

「鴉、その辺にしておけ」
「げ、戸愚呂! テメェも来やがったのか!」
「前の試合でタンクトップが破れちまってねェ」
「毎度毎度筋肉膨らませてっからだろ!」
「つーか上着るだけなら外でも良くね?」
「……ん? 戸愚呂、兄はどうした?」
「ああ、兄者なら隣だ」
「……隣、っておい、まさか!」
「擬態を使って女更衣室に潜り込んでる」
「「なにィィィ!?」」

まさかの堂々たるノゾキに、慌てて隣へ押し掛ける幽蔵コンビ。

「おい優梨、無事か!?」
「戸愚呂がこの部屋に来て……!」
「ちょ、な……出てけヘンタイども〜〜!!」
「ち、違うっての! オレらはただ……」
「戸愚呂兄が忍び込んでいると聞いて……」
「兄ならこっちだぜぃ」

振り返れば、宗一郎に首根っこ掴まれた戸愚呂兄が。

「潜入しようとしてたからとりあえず捕まえたんだが」
「な、なんだそっかよ」
「それは助かる」

ホッとする幽蔵。
しかし殺気が。

「『なんだ』じゃねーだろ。『助かる』じゃねーだろ」

優梨、キレる三秒前。

「ま、待て! 落ち着け!」
「優梨、オレたちは……!」
「うるさぁぁぁい!! 問答無用!」

こうしてノゾキ魔は成敗されましたとさ。


……あれ、たいして変わらない?
 

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