企画小説


□キミの手
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【キミの手】


「ね、秀ちゃんソレよくやるよね」

「ソレ?」

「ソレだよソレ。ポケットに手突っ込むの。クセ?」

「そう……だね。無意識だから、多分クセなんだろう。どうして?」

「お行儀悪いからやめた方が良いと思います」

「すぐには直らないよ」

「妖狐の白魔装束には、ポケットなんか無いよね?」

「無いね」

「ってコトは、今の体になってから付いたクセなんだよね?」

「そうなるね」

「千年の習慣が、たかだか十数年に塗り潰されちゃうの?」

「人のライフスタイルというのは、時代に応じて淘汰されていくものなんだよ」

「全然言い訳になってないし……」

「やけにこだわるね。手でも繋ぎたい?」

「そんなんじゃありません〜〜」

「キミが望むなら寒空の下でも手ぐらい出すよ。ホラ」

「私がわがまま言ってるみたいじゃん……って、ポケットに入れてた割りには冷たい手だなぁ。そういえば、秀ちゃんいつも手ぇ冷たいよね。そういう人は心が温かい、って言うけど……」

「迷信だよ、そんなの」

「なんで? 実際、秀ちゃん優しいじゃん。時々コワいけど」

「絶対迷信だ」

「根拠は?」

「キミ手が、こんなに温かいから」

「……キザ」

「なんならもっとキザな事して、手だけでなく全身の体温が上がるくらいの気持ちにさせてあげようか?」

「結構です! このままで、充分あったかいもん……」



――二人で手を繋げば、
きっと丁度いいぬくもりになる。



「でも、やっぱり行儀悪く見えちゃうから直した方が良いと思います」

(……誤魔化されてくれなかったか)
 

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