企画小説
□親バカ'sの雛祭り
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【親バカ'sの雛祭り】
「ふんふふ〜ん♪」
「ご機嫌で何を作ってるんだ?」
「ひな祭り兼誕生日用のケーキ。秀ちゃんには縁の無い食べ物だよーん」
「ずいぶん張り切ってるけど……誕生日って?」
「雛が食べたいって言うから。あの子、自分の誕生日知らないらしいんだよね」
「まぁ、魔界にそういう概念は薄いから。オレも妖狐の頃の誕生日なんて覚えてないし」
「そっかぁ。でね、むぅさんと三人で考えて、せっかく"ひな祭り"って名前なんだから『この日を雛の誕生日にしよう』って決めたの」
「なるほど」
「『プレゼント何がいい?』って聞いたら、『手作りケーキ』だって。もっと欲張ってくれて良いのにね」
「誰かさんに似たんだろうね」
「ちなみにむぅさんは"ゴードーウシ"とかいうのを捕まえる、って」
「ゴードーウシ……って、轟動牛!? あれは魔界で滅多にお目に掛かれない稀少生物のハズだが」
「そうなの? よく知らないけど、珍味ですっごく美味しいらしいね。『三頭は捕まえて丸焼きにしてやる』って。気合い入ってたよ」
「あの躯が……」
「ぴぃちゃんも捕獲要員に駆り出されてるみたい」
(邪眼をアゴで使うとは……さすが躯)
「あとねぇ、雛には内緒でお洋服のプレゼントも用意したんだ。絶っっっ対似合うと思うんだよ!」
(目がキラキラしてる!)
「あ〜〜〜〜パーティーが楽しみだなぁ」
「ぱ、パーティー……するのか?」
「するよ。百足で着々と準備中」
(……この二人……)
「秀ちゃんも来る?」
「プレゼント、何も用意してないんだが」
「いいよいいよ、気にしないで。ただ『おめでとう』って言ってくれればそれで良いんだから」
「わかった」
――『揃いも揃って親バカか』
……とは、言えなかった。