企画小説


□髪は女の命なの
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【髪は女の命なの】


「トリートメントはしてますか?」

「…………」

「あ、怒った?」

「良い思い出なんかじゃないって知ってるだろうに」

「違う違う、別に鴉を思い出させようとした訳じゃなくてね。ホラ、妖狐って綺麗な髪してるじゃん?」

「……そう?」

「自分のことなのにわかんないの?」

「当時はいちいち気にしてなかったから」

「今は気にしてる、ってコト?」

「そういう意味じゃなくて……まぁいいや。で、髪がどうしたって?」

「ん、なんか特別な手入れとかしてたなら参考にしようかなぁ、って思って」

「……特には……」

「え〜〜手入れナシであのサラサラヘアーなの? ゼータクだな」

「オレに言われても……それに、キミの髪は充分綺麗だよ。今更そんなことする必要も無いだろう」

「やだ。納得出来ない」

「どうして?」

「女のプライド!」

「…………」

「なに、そのカオ?」

「いや……ちょっと嬉しくて、ね」

「……私の髪が妖狐に負けてるのが?」

「まさか」

「じゃあなに!?」

「キミが女らしく在ろうとしているのが」

「……ッ」

「少し前まで、オシャレだの美容だのにはあまり興味が無かったろう?」

「そ、れは……だって……」

「オレの為、って思っていいのかな?」

「ぅ……(超ニコニコしてる……)」

「ねぇ、どうなの?」

「ど、どうなの、って……」

「髪の毛一本まで、キミの全てがオレのもの……って思っていいの?」

「ぅぅっ……(この笑顔は、マズイ……)」

「……ねぇ?」

「ス、ストップストップ、今は手入れの方法の話! そういうのはナシ!」

「……チッ」

「(『チッ』? 今『チッ』って言った!?) ひ、秘訣が無いならもう結構ですッ」

「秘訣、か……」

「あるの?」

「……よく食べてよく動いて…………よくヤる、とか?」

「〜〜〜〜もういい!」



何かにつけてすぐそっちの方向へ持っていこうとする男。
綺麗の秘訣は分からないけど、長髪なのはきっと伸びるのが早いからだ。あれはきっとエロスの証なんだ。
 

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