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□主従関係で強気な主 5題
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私は、幼い頃から普通とは違った子供だった。

年の近い2人の兄達の影響もあってか、周りの女の子達のように楽器や、ダンスの練習をするよりも、剣を振り回すことの方が私には魅力的に見えた。

生傷の絶えない私を乳母は叱ったが、両親に剣を握るのを止められたことはなかった。

当時は気が付かなかったが、両親も相当の変わり者であったと思う。


しばらくして、兄達が騎士になると聞いた時、迷わず私も志願した。

今思えば、ローライト家はそれなりに名の通った家柄なので、縁談などは腐るほど来ていたはずなのに、(というより、仮にも一家の一人娘だったのだが)またも両親からの咎めは無かった。


そうして騎士団に入団した訳だが、やはり普通の感覚を持った人々の目には私は異様に写るらしい。私はそんな人々に文句は言わせまいと、男女の体格差を埋めるべく、ただひたすらに鍛錬に励んでいた。

騎士団に入ってから知った存在。

木々殿のようになれたら。
あの人のように剣を振るってみたい。


「相変わらず、精が出るな。」

そんなことを考えていると、不意に背後から声がかかった。

「で、殿下!」

慌てて振り返ると、イザナ殿下が爽やかな笑みを浮かべて立っていらっしゃった。

殿下はここ最近、頻繁に様子を見に来て下さる、と同僚が話していたのを思い出した。

「ああ、今日は視察ではないよ。」

私の考えを見透かしたように殿下はそう仰った。

「では、何故?」

「貴女に、用事があるんだ。」

思ってもみない返しに思考が停止しかける。

「わ、私・・・?」

何かしてしまっただろうか。

慌てる私を見て可笑しそうにクスリと笑った後、殿下はサラリと告げた。


「ハル・ローライトを、引き抜こうと思ってね。」


いよいよ思考が停止した。

「わ、わわ私のような未熟者を、何故っ?」

「貴女だから、だよ。」

訳が分からない。

混乱する私を真正面から見つめ、
殿下はにっこり笑っておっしゃった。



「つまり、ハル、貴女は、



1.俺についてくればいいんだ
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