★コアラの部屋
□紡ぐ言葉
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その日は珍しく、シンタローからの誘いだった。
――久しぶりに集まって飲みにでもいかないか?
数日前、シンタローから伊達衆宛てに届いたメール。
最近、シンタロー総帥も伊達衆も忙しい。
殺さずになってからというもの、一つ一つの事案に時間がかかっている。
その上、新人育成もそれに合わせたプログラムだ。
実戦で使い物になるにも時間がかかる。
こちらは殺す気がなくとも、相手方は殺す気で来るのだから仕方ない。
伊達衆や実力のある者たちは、あちこちの遠征に駆り出され休む暇もない。
その上、報告書の作成や日々のデスクワークもある。
部署に配属される新人を気にかけなくてはならない。
それは、新総帥のシンタローも例外ではなかった。
総帥自ら動くこともしばしばあった。
伊達衆が仕事で顔を合わせることも少なくなってきて、ましてやシンタロー総帥ととなると、
さらにだった。
この誘いに、集まらないわけがなかった。
日頃のストレスもだが、やはり死闘を潜り抜けた心許せる仲間と過ごす時間は
格別なものであったからだ。
待ち合わせ時間10分前。
集合場所であるお洒落なお店の入口付近で、大柄な男がちょうど店に入るところが見えた。
「コージはん、早かったんどすなぁ」
「ん?おお!アラシヤマか!ぬしも今じゃったんか。わしもちょうどついたところじゃ!
これが楽しみで仕事してきたからのぉ」
「ちゃんと仕事終わらせてきはったん?」
アラシヤマが怪訝な目でコージを見れば、コージは苦笑いを浮かべた。
「そがぁな目でみんでもええじゃろ?ちゃんと終わらせてきたわい」
「ほんまどすかぁ?コージはんは、事務仕事よりこっちの方が仕事みたいなお人どすからなぁ」