★トリアラの部屋
□好きな味
1ページ/9ページ
時計の針は、午後11時を少し過ぎていた。
いつの間にか人気のなくなったオフィス。
何杯目かの珈琲も、すでに冷たくなっていた。
「あぁ、あかん。もうこないな時間やったんか」
さすがにおなかがすいてきていた。
「残りは明日どすな」
一人ごちると、デスクの書類を片付け、パソコンの電源を落とした。
当然だが、廊下にも人気はなかった。
オフィスフロアから少し離れた食堂へと向かって歩いていた。
こういう時、24時間営業している食堂があるのはありがたい。
・・・なのに・・・。
「なっ・・・」
食堂の入口には、休みを知らせる張り紙。
「ついてへんわ・・・」
がっくしと肩を下げると、もと来た道に向き直った。
自分の部屋には食材がなかった。
今週は忙しい時期だと分かっていたので、生の食材を買っていなかった。
といっても、インスタントなんてものを買っておくはずもなく。
「はぁ・・・、コンビニどすかぁ・・・」
少し離れたスーパーまで行く気にはならなかった。
選択肢は徒歩数分のコンビニ。
コンビニのお弁当なんて、あまり食べたくもないのだが。
贅沢は言っていられない。