★トリアラの部屋

□好きな味
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時計の針は、午後11時を少し過ぎていた。

いつの間にか人気のなくなったオフィス。

何杯目かの珈琲も、すでに冷たくなっていた。

「あぁ、あかん。もうこないな時間やったんか」

さすがにおなかがすいてきていた。

「残りは明日どすな」

一人ごちると、デスクの書類を片付け、パソコンの電源を落とした。

当然だが、廊下にも人気はなかった。

オフィスフロアから少し離れた食堂へと向かって歩いていた。

こういう時、24時間営業している食堂があるのはありがたい。

・・・なのに・・・。

「なっ・・・」

食堂の入口には、休みを知らせる張り紙。

「ついてへんわ・・・」

がっくしと肩を下げると、もと来た道に向き直った。

自分の部屋には食材がなかった。

今週は忙しい時期だと分かっていたので、生の食材を買っていなかった。

といっても、インスタントなんてものを買っておくはずもなく。

「はぁ・・・、コンビニどすかぁ・・・」

少し離れたスーパーまで行く気にはならなかった。

選択肢は徒歩数分のコンビニ。

コンビニのお弁当なんて、あまり食べたくもないのだが。

贅沢は言っていられない。
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