Dreams

□ねがいごと
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お願い事か…

今更神様に頼まなきゃいけない程の願い事なんて、俺は特に無いかな。こうやって健康な身体で彼女と2人、新年を迎えられただけで幸せなんだ。
チラリと彼女の方を見ると、目を瞑って一生懸命に手を合わせている姿がなんだかすごく可愛くて胸を打たれた。

昨年のクリスマスにお揃いで買ったスニーカーを履いて二人足取りを並べ、初詣に人が行き交う境内をゆっくり歩く。


『随分熱心にお願いしてたね?』
「…うん!」
『何をお願いしたの?』
「ん〜、ひみつ!!幸村くんは…?」
『君が秘密なら俺もひみつ〜』

そう言うとぷぅっと頬を膨らませて拗ねる君って本当にずるいよね。俺の心を好き勝手にくすぐるんだから。
寒さに悴んで、少し乾燥した彼女の手をギュッ、と握ってもう一度、お願いしてみる。

『ねえ、教えて?俺も、教えるから。』

「恥ずかしいからなぁ」なんて言いながら、真冬のよく晴れた空に目線を泳がせる君を見ると、ますます聞きたくなってしまうよ。
新年から色んな表情の君が見られて、今年も楽しい一年になりそうだ。

「二つあるの!…一つは、来年も立海が優勝しますように!」
『ふふっ、それはもう叶ったも同然かなぁ…』
「言ったな〜!?」
『ああ、言ったよ?来年ここに来る時は、その報告しないとね?立海が連覇出来ました!って。ね?』

ちょっと照れたように、顔をくしゃっとしながら笑う君の顔が大好き。俺もつられてにまりとしてしまう。

『もう一つは…?』

そう問いかければ、被っているニット帽をほんの少しだけ下に引っ張る仕草を見せるのは照れ隠しかな?
照れているのか、寒さのせいなのか、鼻から耳まで真っ赤にしている君が本当に可愛い。



「…ずっと、幸村くんと一緒にいられますように…」



あんなに熱心に手を合わせながら俺との事をお願いしてくれていたのか、なんて考えたら嬉しくて、思わず顔を綻ばせてしまった。

「幸村くんのお願い事は?」そう聞き返すように、君の手が俺の手を、ギュッ、と握り返す。
深く被ったニット帽から覗く前髪を軽く横に流してあげると、大きな瞳が俺の目を見てぱちぱちと瞬きをしながら返事を待っている。


俺のお願い事はね?…




『君の願いが叶いますように。』


ぱっ、と花が咲いたようにキラキラとした表情で俺の顔を見上げる君が愛おしくて。
人が見ているだろうけど気にとめる事もなく、その場で彼女の身体をきつく抱き締めた。



『あれ…?ちょっと太った…?』
「もう…っ!ダウンの上からだからでしょ…!?」
『そうかな…?お餅の食べ過ぎかと思ったよ…ふふっ、』

俺がこんな憎まれ口を叩くのも、実は照れ隠しなんだけどね。
君が口を尖らせた顔が可愛いから思わず、キスをした。

今年も色とりどりの表情、俺だけにたくさん見せて欲しいな。



『ずっと、ずっと二人で一緒に居よう。』


俺の胸にすっぽりと埋もれながら、彼女は小さくこくりと頷いた。






A Happy New Year 2016!!!

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