Long

□赤いあの人
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03.ご飯







サンジさんは、というと余程時間が差し迫っているのかナミさんに急かされ、「じゃあなっ!」と言うとさっさと駅の方へと駆けていった

そんなサンジさんを見送りながら、わたしはまだ驚いているローさんとキッドさんに目を向ける


「…そんなに驚きましたか……?」

見方によっては失礼な反応をする2人に恐る恐る声を掛けてみる
そんなわたしを改めてジッと頭のてっぺんから足元まで見ると、「「……高校生だな。」」とだけ呟いた


……この反応も何か失礼な気がするが何も言わないことにする

そんなわたしに構わず、キッドさんは頬を掻きながら「…だが、まぁ……、黒足の野郎と仲良さそうだったから成人してるかと思ってはいたな。」と言った

それにローさんも同意する

「俺も少し童顔な20歳かと。」


その言葉を聞いて、だから誘ってくれたのか、と納得する
もしかしたら、未成年と知った今、わたしは2人の飲みには付いて行かない方がいいのかもしれない

「あの、わたし、やっぱり帰った方がいいですか?」

やっぱり迷惑はかけたくないので、と思って聞くと「でも、お前は来たいんだろ?」とキッドさんが優しく返してくれた


「別に俺らはお前が来てもいいんだよ。ただ、親が心配すんじゃねぇか?もちろん、お前に酒は飲ませねぇし、ちゃんと家まで送ってやるから心配はいらねぇんだが。」

そう言われて、わたしは首を振った

「今、一人暮らしなんです。もうすぐ大学だし独り立ちできるようにって先月から…。でも、まだ独りの家に帰るのも独りでご飯食べるのも慣れなくて……」

暗に一緒に食事に行きたいと我が儘を言っているようになってしまったが、2人は特に気にすることなく「んじゃ、一緒に食うぞ」とわたしの背中を押して歩き出した
そして、そのままキッドさんはわたしの頭に手を置いて「何食いたい?」と聞いてきてくれた

わたしが年下だからか甘やかしてくれる2人に嬉しさから自然と笑みがこぼれる


「ありがとうございます。……でも、お店決まっていたんですよね?だったらそこでいいですよ。こういうとき、どこに行ったらいいのかとか分からないので…」

高校生の付き合いで行くところなんて、ファミレスとか焼肉、もんじゃとかが妥当なところ
けれど、ちょっとそこを提案するのは気が引けた
もんじゃや焼肉は兎も角、ファミレスはない

そんなところも察してくれたのか、「そうだよな。」ってわたしの髪をくしゃっとすると「おい、トラファルガー。」とローさんに声をかけた

「なんだ?」

そう言って前を歩いていたローさんは眉間にシワを寄せて振り返る

「てめぇがこの間飲みに行ってた店あんだろ。」

「この間っていつだ。」

「先週だよ。覚えてねぇのか、クソだなてめぇの脳みそは。」


なぜかケンカ腰になるキッドさん
その言葉に先程の優しい雰囲気は2人から消え去り、ローさんの眉間により深くシワが刻まれる

「覚えてるに決まってんだろ。クソはてめぇだ。」

「やんのか、クソファルガー」

「先にケンカ売ってきたのはてめぇだ。俺は売られたケンカは買うぞ。」


今にでもケンカが始まりそうな展開に、わたしはどうしたらいいのか戸惑ってしまう
とは言っても、ギラギラした空気ではあるがピリピリとした険悪な雰囲気ではないのだけれど

それでも、黙って見ているわけにもいかず「あの……」と声をかける

その声が耳に届いたキッドさんは、「あぁ、悪ぃな。」と言って落ち着くためにか、息を吐いた
同じく、少し冷静になったローさんは「で、先週の飲み会がどうしたんだよ?」とキッドさんに聞く

「その店いいって言ってただろ。案内しろよ。」

その言葉を聞くと、ローさんは納得したように「あぁ。」とだけ返事してまた歩き出した



そこからもちょいちょい言い争いをしながら、ローさんの案内で無事にお店に到着した

店に入るとローさんとキッドさんが横に並び、わたしはキッドさんの前に座った

席に座るとすぐに「生2つ。」と慣れた様子でローさんが注文する
そしてすぐに、「お前は何飲む?」と聞かれたので、とりあえず「お茶がいいです。」と答えた



落ち着いてあたりを見回してみると、店内は明るくて結構女性だけの席も目立つ
きっと、わたしに気を使って選んでくれたんだ、ってことが分かる


そんなわたしにローさんは「今日はユースタス屋の奢りだから頼みたいだけ頼めよ。」と笑いながらメニューを渡してくれた

そんなローさんの隣でキッドさんは眉を顰める

「言っとくが、てめぇの分は奢らねぇぞ、トラファルガー」

そんなキッドさんを気にすることなくローさんは「小せぇ男だな。」と呟く


またそんなことを言うからローさんとキッドさんの言い争いが始まる

「なんだと?なんで俺がてめぇの分を払わなきゃなんねぇんだよ。」

「俺は先週も来週も飲み会があんだよ。金はあるが、払わないに越したことはねぇだろ。」

「金あんなら払え。」


たった数時間でこのやり取りに慣れてしまったわたしは口元を緩めて「ふふふ…」と笑う

最初こそはケンカかと危惧したものの、このペースのやり取りがきっと普通なんだと思う
なんか、2人のやり取りを見ていると、ケンカするほど仲がいいという言葉がピッタリ
"腐れ縁"なんて言うけど、結局は仲良しってことで、あのケンカ腰の言い合いも毎日してるんだろうな、っていうのが今日初めて2人と喋ったけど、なんとなく分かる
言い争いはするけど、認め合ってるって感じがとても微笑ましい


楽しそうに笑うわたしに気づいた2人は「「なんだよ」」と不満そうな顔をして言う
それもまたタイミングよく一緒に言うものだから、より一層微笑ましい
けれど、また「仲いいですね。」なんていうと機嫌を悪くしそうだから「なんでもないです。」と誤魔化す

「それより、わたし、一応バイトしていますし、自分の分払えますよ?」

ずっと気になっていたが、キッドさんはわたしの分なら払ってくれるというような感じだったので、自分で払う意思を伝える

すると、その提案は即座に2人から却下された


「いいや、お前の分は俺が払うから気にすんな。そもそも俺たちが誘った飯だしな。」

「でも…」と言いたくなったところでローさんに「年下のしかも女の財布からは出させねぇよ。」と遮られた



……イケメンか!!

そんな男らしい2人に感動しているうちにもローさんとキッドさんの言い争いは続いていた







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