Long
□赤いあの人
5ページ/6ページ
05
しばらくして電話を終えたローさんが戻ってきた
けれど、ローさんは席に座ることなく、ジョッキに残っていたビールを飲み干して帰り支度を始める
「悪ぃな。急用ができた。俺は帰るがお前らはゆっくりしてけよ。」
そう言いながらコートを羽織るローさんに「えっ、えぇ!?」とわたしが声をあげる
けれど、キッドさんはいたって普通の様子で「あぁ。」とだけ頷いた
そんなキッドさんに、ローさんは、「おい、ユースタス屋。飲み過ぎずにちゃんと送ってやれよ。」と言い残して店を後にした
……なんか、今日のサンジさんといい、今のローさんといい、すごくわたしを子供扱いしてる気がする
確かに、1番歳下でまだ高校生だけど、それなりに自立出来てる自信もあるし、もう少しで同じ大学生なのに!
そんなことを思いながら、わたしはローさんが去った方を見ていた
すると、前の席から「あいつの彼女が気になんのか?」なんて向かい側から声を掛けられた
その声に、ハッとして今度こそ本当にキッドさんと2人きりになったことを思い出す
なぜかまたその事実にどきりと心臓が跳ねて、キッドさんから視線を逸らしたまま「いえ、特には……」とだけ呟いた
…なぜかっていうのはおかしいか
理由はおそらく、キッドさんの存在感
赤い髪も、鋭い目も、なんとなく醸し出てる雰囲気とかもキッドさん独特なものがある
そんなことを思いながら、わたしはテーブルに並べられた料理に手を伸ばした
「…でも、電話一本で帰っちゃうなんてローさんすごく彼女さんのこと好きなんですね」
羨ましいなー、なんて言うわたしにキッドさんは苦笑を漏らす
「どーだかな。あいつの彼女は骨が折れそうだ。」
でも、そう言うキッドさんの目はなんだか優しくて、きっと素敵なカップルなんだろうな、って想像できた
それからは、キッドさんの大学の話、わたしの高校の話、そしてキッドさんやサンジさんたちの高校時代の話へとなった
なんでも、サンジさん、キッドさん、ローさんはロビンさんが言ってた通り、みんな違う公立高校にいたのだけれど、どうもその高校が近かったせいでよく顔を合わせていたらしい
特に、ローさんとサンジさんの友だちの麦わらさんとは腐れ縁なんだそうだ
「なんつーか、俺は学校では結構真面目だったんだが、街を歩けばこの赤い髪とか人目を引いていてな。そんなときにあのいけ好かねぇトラファルガーと麦わらに会っちまったんだよ」
なんて言うキッドさんは昔を思い出しているのか、楽しそうに笑いながら自分の赤い髪に触れる
確かに、その赤い髪色は人目を引く
わたしだって、初めてキッドさんを見たときのことはとても印象に残っている
そんなキッドさんに、「え、キッドさん真面目だったんですか?」なんて出かかった失礼な言葉は、たった数時間ではあるけれど、その中で見つけたキッドさんの性格と今、彼が通っている大学を思い出して飲み込んだ
何しろ、キッドさんが通っている大学はかなり名が通った私立大学で、大学入試となるとかなりのレベルが要求される
正直、わたしには到底入れないと思う
そこの医学部にローさん、理工学部にキッドさん、そして文学部で考古学を学んでるのがロビンさんである
さっき聞いたときはびっくりした
医学部はもちろん理工学部などの理系はそれこそトップレベルの大学だから、普通は勉強なんてものじゃ足りないくらい勉強しなくては入れないのである
けれど、キッドさんが話す高校時代はどんなバカをしたとか遊びに行ったとかばかりでとても楽しそうだった