DonQuixote Doflamingo
□海賊と姫の一週間
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03
「俺の島は…そうだな、飯は美味いし女もいい。島の興業の一つのコロシアムも見物だろうな。豊かな国だ。……だが、まぁ、お姫サンが気に入りそうなものはアレだろ。生きているおもちゃと妖精の伝説。」
「おもちゃが生きているのですか!?それに妖精も!?」
なんともない、とでも言うようにサラッと言ったドフラミンゴさんとは正反対に、わたしは興奮気味に瞳を輝かせた
ドフラミンゴさんは「あぁ」とだけ言うと、隣り合ってベッドに並んでいるのが話しづらかったようで、
ドフラミンゴさんはわたしを向かい合うよう抱き上げると、わたしをドフラミンゴさんの太腿の上に置いた
「フフフ…この方がいい。」
そう言って笑ったあと、わたしの腰に手を回して話を続けた
「おもちゃは動くし、喋る。普通の人間のように暮らしている。妖精ってのは…まぁ、ただの街の噂だが会えば気に入るだろうよ」
「ドフラミンゴさんは会ったことあるのですか?」
「俺か?フッフッ、そりゃあな。素直な奴らだったよ」
楽しそうに話してくれるのを見て、わたしはどんどんそのドフラミンゴさんの国、ドレスローザに興味を抱いた
「行ってみたいです…」
ボソッとつい零れた言葉にドフラミンゴさんは口元に弧を描いて笑う
「それは、お出かけの要望か?フッフッフ、俺の国に来るのは構わねぇが、俺は連れてかねぇぞ。」
「…なぜですか?」
これでは連れて行ってほしいと言っているような質問になってしまったが、反射的に聞いてしまった
ドフラミンゴさんが聞いてくれると言ったお願いは一つだけ、との約束だったから
こんな乞うような聞き方をして調子に乗るな、とでも言われないかと心配になって俯いた
「お姫サンが望んでいるのは"お出かけ"だろう。悪ぃが、俺とこの島を出たら一生ここへは帰さねぇ。王下七武海とは言え、俺は海賊だからな。」
「…海賊??」
予想外の事実を耳にしたわたしは一瞬、頭の中をハテナにした
「…ドフラミンゴさん、海賊なんですか?」
「あぁ。なんだ、俺が怖くなったか?」
口元の笑みはそのままにわたしの反応を楽しむように聞いてきた
「いえ…海賊には初めて会ったので、海賊ってだけで怖いとは言えないのですが……驚きました。」
わたしの返事を聞いたドフラミンゴさんは満足そうにして、腿の上にいるわたしを抱え直した
「海賊ってことはやっぱりわたしも何か差し上げたほうがいいのですか?」
その問いにドフラミンゴさんは驚いたような表情をすると、フッフッフッフ!!と笑い出した
「初めてだ、そんな風に顔を輝かせて物をくれようとした奴は。なんだ、塔の中のお姫サンは海賊ですら興味の対象かァ?」
そう言われて、「いえ…」と言葉を濁すも、サングラス越しに射抜く様な視線を感じて正直に言った
「……お母さまから頂いた本に宝物を奪ったりして集めてる人たちと書いてあったので、そうなのかと…」
「フフフ、まぁ、あながち間違っちゃいねぇよ。だが…奪うものは金銀財宝だっけてわけじゃねぇ。…そうだな、折角お姫サンがくれるってんだ、今日一緒に寝てやる分の見返りは頂いておこうか。」
それを聞いたわたしは「なんでも差し上げます」と言おうとして言葉を飲み込んだ
「わたし、よく考えたら差し上げられるものありませんでした…」
なんとなく申訳なくなって俯くと、ドフラミンゴさんに顎を掴まれて上を向かされた
顔を上げると、特に気にいしていないように口元に笑みを浮かべるドフラミンゴさんがいた
「フフフ…言っただろ?海賊が奪うのは金銀財宝だけじゃねぇって。欲しいもんはなんでも奪うんだよ。」
「…欲しいもの、あるのですか?」
「まぁな。お姫サンからは7日かけて色々奪ってやるよ。今日は……そうだな…」
そこで言葉を切ると、ドフラミンゴさんは顎に添えていた手をスッと首筋を滑らせて鎖骨に触れた
「……ここだ。いいか、この首から鎖骨までが俺のものだ。奪うんだから、お姫サンの意思は関係ねぇ。」
しかし、そんなところを奪うと言われてもわたしはどうすればいいのだろうか
そんなことを思ったことが顔に出たのだろうか
「いいか、誰にも触らせるんじゃねぇ。誰にも、だ。」
そうは言うものの、そもそも触れてくるような人はいないのだけれど…
そんなことを思いながらも別に不都合はないのでとりあえず、「わかりました。」と頷く
わたしが頷いたことに満足したのか、ドフラミンゴさんは口元をニンマリとさせて、「ならいい。」と言ってわたしを抱き寄せた
そのままドフラミンゴさんはわたしの首元に顔を埋めたかと思えば、肩に掛かっていた洋服を少しずらした
一瞬だけ鎖骨と肩の間たりに痛みが走る
「んっ…?」
何事かと思ってドフラミンゴさんを見上げると、なんでもなかった様にわたしを抱え直した
「そろそろ寝るぞ。」
わたしが口を開いて質問をする前にそう言って、わたしを抱えながらドフラミンゴさんは布団を被せた
その後、何かあったわけでもなかったのでまぁ、いいか、なんて思って瞼を閉じる
初めて人と入る布団は暖かくて、すぐに眠れそうだ
完全に眠りに入る前に、と重い瞼を押し上げてドフラミンゴさんを見上げる
「おやすみなさい、ドフラミンゴさん……」
それだけ呟くとわたしは瞼を閉じて深い眠りに入った
「おやすみ、紗良…」
ドフラミンゴさんが囁くように返したその言葉は、わたしの耳には届かなかった
朝、目が覚めたとき、そこにはドフラミンゴさんはもう居なかった
夢だったのか
そんなことも思ったけれど、ふとドフラミンゴさんが居たはずの隣をみると
そこにはピンクの羽が一枚、落ちていた
「ドフラミンゴさん……」
その羽を丁寧に拾い上げると、わたしはそっと胸に抱き寄せた
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