DonQuixote Doflamingo
□依存
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03.再び立ち上がるには
目が覚めたとき、最初に目に映ったのは先程まで目の前に居たはずのドフィでも、見慣れた木の天井でもなく、真っ白な天井だった
きっとさっきまでのは夢だったのだろう
それにしても、懐かしい夢を見たものだ
「起きたか。」
ボーっとする頭で宙を見つめていると、ベッドの横の方から声がかけられた
「……ここは…?」
そう尋ねながら声の主の方を見るとそこにはドフィがいた
ドフィ…?
夢に居たドフィとは違って、もう少し優しい雰囲気とともにわたしの顔を覗き込んだ
まだ夢心地のわたしはそのギャップに少しばかり戸惑う
「ここは俺の部屋だ。泣きつかれて俺の腕の中で寝むちまったんだよ、お前。」
そう言われて少しだけ冴えた頭で眠る前のことを思い出す
「…泣きつかれて…………っ!!ロシーっ!!ロシーは!?」
眠る前のことを思い出したとたんに、わたしはガバッと身を起こし、ドフィに縋りついた
「……コラソンはもう居ねぇ。ちゃんと受け入れろ。」
そう言って、ドフィはわたしを体から離すと大きい手をわたしの頭に置いた
ロシナンテもよくやったその仕草は、簡単にドフィからロシナンテを想像させる
兄弟で少し似ている手だからか、ドフィにそうやってやられると、とてもリアルに、ロシナンテがまだそこにいるように感じる
ロシナンテと最後に会った日も、ロシナンテはわたしの頭に大きい手の平を置いて、優しく撫でてくれた
…とても死んだなんて信じることはできない
けれど、見上げるとそこにロシナンテはいない
その現実がやっぱり信じられなくて、頭にあったドフィの手を優しく取って俯いた
「……ダメだよ、ドフィ。受け入れられない。だって……ロシーはわたしの全てだった。ロシーがいなかったらわたしはもう生きる場所も理由もない。だったら、わたしは家に帰ってずっとロシーを待ってる。」
消えそうな声でつぶやいたわたしの言葉を聞くと、ドフィは眉間にシワを寄せた
「何を馬鹿なこと言っている。」
「馬鹿でも、それしかわたしが生きられる道はないの。」
それだけ言うと、わたしはベッドからゆっくりと立ち上がった
「はぁ…。」
立ち上がって、一歩踏み出そうとした瞬間に横に居たドフィがため息をついた
「……そうだな、すぐに受け入れる必要はねぇ。てめぇには無理そうだ。だが、死んだヤツを永遠に待つなんてのは時間の無駄だ。」
いつも上がっている口角を下げてドフィは言い放つ
「だからっ…!?」
他に道がないの!!という言葉を紡ぐことはできなかった
なぜなら、ドフィがわたしの目を黒い布で覆い隠し、ベッドに押し倒したから
一瞬のことで何が起きたか分からず、その上、これから何をされるのかか分からなくてベッドの上で硬直する
突然の暗闇と身動きができないことでわたしの思考はパニック寸前だ
すると、優しい手がわたしの頬を撫でた
ロシーっ!!!!!
その手つきはロシナンテがいつも触れてくるように優しく、暖かかった
それはドフィの手ではなく完全にロシナンテのものだった
ロシナンテを感じられたことが嬉しくて、一筋の涙がわたしの頬を伝う
その涙を優しく拭うように指が目元を撫でた
そのまま腕が背中に回り、ゆっくりと抱きかかえられるようにベッドから起こされた
「まだコラソンを、ロシナンテを忘れなくていい。だが、ここに居ろ、紗良。今度はドンキホーテファミリーがお前の居場所だ。」
そう言うと、ドフィはわたしの目を覆っていた黒い布を外した
「…似てんだろ?俺の手とコラソンの手。多少は違うと思うが、まぁ、慰めになんならいつでも来い。」
似てる?
確かに、少し似てる手だとは前から思っていた
けど、ドフィの手はロシナンテよりも冷たくてもっと硬い
でも、さっき触れた手はロシナンテの手、そのものくらい暖かくて柔らかかったのだ
「…なんで、そんなこと言うの?わたしにまた大切なものを失えって言うの?あんな風にロシーを感じちゃったら、わたしもうここから出ていけないじゃない…」
例えロシナンテが死んだと言われても、それをわたしが確認したわけじゃない
だから、わたしはロシナンテが生きていると信じて待っていられると思っていた
…なのに、ドフィの手にロシナンテを感じてしまったわたしは、その温もりから離れられない
わたしは、なぜ放っておいてくれなかったのか、とドフィを睨んだ
「…なんでだって?そりゃ、お前は俺の実の弟が大切にしていた女だ。兄の俺がそう放っておけるかよ。」
そう言ってベッドの横に掛けていたピンク色のコートを羽織った
「…それに、大切なものをまた失うだって?今のてめぇに大切なものは何一つねぇだろ。だったら俺と一緒に来い。ロシナンテも居ねぇ、てめぇの親も殺したこの世界を破壊してやんだよ。フフフッ!!この俺が倒れることもねぇ!ここはてめぇが立ち上がるにはいい場所だと思うがな、紗良。」
それだけ言い残すとドフィは部屋を後にした
一人残されたわたしは、先程、ドフィが触れた場所に手を当てた
さっき、ここにロシナンテがいた…
そう思うとまた涙が溢れそうになる
……その上、あんなこと言われたら、わたしはもうここから出ていくことはきっとできない
ロシナンテがいなくなって、頼ることができなくなったわたしが、次に頼れるのはきっとドフィだけ…
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