DonQuixote Doflamingo

□依存
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04



ドフィが出て行ってからしばらく、わたしは一人で何をするでもなくぼんやりとしていた

そのわたしの頭の中では整理できていない感情と出来事と思い出がぐるぐると渦巻いていた


ロシナンテが死んだなんて信じられない
けれど、なんとなく、もうわたしのもとには戻ってこないんじゃないかって感じる
悲しいし、なんで一人にしたのって怒りたい
そう思うといつもロシナンテが「悪いな」って困ったように笑いながらわたしの頭に手を置いてくれてたのを思い出す


そんな風にいろんなものがごちゃごちゃになるから、わたしは何もできずにただ宙を見つめるようにぼんやりとする

でも、ただ一つだけ確かなのは
もう一人でロシナンテを待つことはできない
ってこと

だって、ドフィの側に居ればいつでも温もりを感じることができるって知っちゃったから


そんな些細なものにでも頼らないと生きていけないくらい、わたしは弱い




どんどんと俯いていく気分だったけれど、その気分を変える気にもなれずただベッドの上に座っていた

すると、コンコンっと控えめにドアがノックされた


ここはドフィの部屋だし、性格上、本人が入るときにノックするわけがない
となるとドフィへのお客様かもしれない

そう思うと勝手に返事をすることもできずに、ただ黙って向こうの反応を待った

誰もいないと思って去って行くかもしれない、と



しかし、そんなわたしの予想に反して、扉の向こうの人はもう一度ドアをノックして声をかけた

「紗良さん。」

呼ばれたのはわたしの名前だった

あまり人に会える状態ではないんだけれど、わたしに用事がある以上無下にはできなくて小さな声で「はい。」とだけ返事をする


すると、カチャリと控えめな音とともに扉が開き、小さな女の子が顔を出した


「はじめましてっ、ベビー5です。」

小さな女の子は笑顔を浮かべて自己紹介をしてくれたけれど、わたしはそれに力なく「よろしく。」としか返せなかった

そんなわたしを気にすることなく、ベビー5はわたしのもとへと駆け寄ってそっと腕を掴んだ


「若様が呼んで来いって。もうすぐお昼ご飯だよ。」

そう言われれば確かに起きてから何も口にいれていない
だけど、どうしても食欲はわかず、その上、食堂で大人数で食べるのはどうも気が乗らなかった

「ごめん、食欲が……」

そう言って断ろうとしたけれど、ベビー5ちゃんは「絶対連れてこいって言われてるの!」ってわたしの腕を少し引っ張った

全く気分は乗らないけど、そのままベビー5ちゃんを外に放り出すことも出来ず、「分かった。」と頷いてベッドから立ち上がった


ドフィの部屋を出てから食堂までは少し距離があるらしい
その間もわたしの心は重かったけれど、ベビー5ちゃんは何も言わずに笑顔でわたしの手を引いてくれていた

温かくて小さなその手は少しだけ重い鉛のような心を軽くしてくれた






「フッフッフ、来たか、紗良」

食堂に到着すると、わたしとベビー5ちゃん以外は全員居るようで二席だけ空いていた

一席はドフィから遠いテーブルの端で大きな体の男の子の隣
もう一席はドフィとの間に大柄なベタッとした男を挟んだだけの距離だった

もちろん、わたしは来たばかりだしあまり目立ちたくなかったので、何も言わず端に座ろうと足を向けた
けれど、そこにはいつの間にかベビー5ちゃんが座っていた


こうなったらもう一席の方に座るしかないんだろうけど、どうも居心地が悪そうだ

そんなことを思って立ち尽くしていると、「紗良、こっち来い。」と側に来るように手招きされた

迷いつつもドフィの側へ行くと、ガッと片腕を肩に回され、ワインが注がれたグラスを渡された

「…っ」

今はいらない、と断ろうとしたところを「おい、お前ら」という仲間の注目を集めるドフィの声に遮られる

「まぁ、知っているヤツもいるだろうが…これから俺らの家族になる紗良だ。よろしく頼むぞ、お前ら。」

そう軽くわたしの紹介をした後に、「乾杯。」と軽くワイングラスを掲げた
そして、それを合図に食事が始まり、食卓は少し賑やかになった

どうしたものかと未だにドフィの横で突っ立ていると「どうした?座れ。」とドフィとベタっとした大男の間を指さされた

それに「えっ?」と思ってドフィ越しに反対側を覗いてみると大男2人に隠れた小さなイスが置いてあった

先程空いていると思った二席以外にもう一つわたしの席が用意されていたようだ
…大男2人のせいで正面からは見えなかったけれど

ドフィの隣なら…、そう思ってちょこんと腰を下ろすと、隣のベタついた大男から話しかけられた

「べへへ…おれ、トレーボル。よろしくなぁ〜、紗良。」

近すぎる顔にちょっと引きながら「……よろしくお願いします。」と答える


それがきっかけに他のメンバーからも次々とあいさつをされるが、正直、キャパオーバーで覚えられた自信がない





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