Middle & Short

□雨が降るとき
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その超有名レストランに到着したものの、今のわたしはカジュアルな服装に雨に少し打たれたせいで崩れた髪型

とてもじゃないが入れない…!!

「あ、あの…」

「あぁ?」

堂々と入口に向かうドフラミンゴさんに後ろから声をかける

「ちょっとわたしの服装が…雨にも濡れてしまいましたし…」

せっかくいいところに連れて来てもらったのに、と申訳なさそうに言うと、ドフラミンゴさんは黙ってわたしのことをジッと見つめた

その沈黙と視線に耐えられなくて俯くように頭を下げればようやくドフラミンゴさんが言葉を発した


「そんな悪くねぇよ。だが…まぁ、俺が気になんなくても、紗良チャンが気になるならしょうがねぇ。ついて来い。」

そう言って、表の入口に向けてた足を裏の方へと変えた


……?

どこへ向かうのかと疑問に思いながらも後について行くと、裏口からレストランへと案内をされた


「気になっていたようだから、場所も個室にしといた。そんなに広いとこでもねぇし、俺と2人だから気楽に食えよ」


……なんと、この人はそんなことまで出来てしまうのか

明らかなVIP対応にわたしは目を見張った


「……なんか、わたしなんかのためにすみません…」

通された部屋は言われた通り、広すぎずに落ち着ける空間だった

席に着いてから「なんか食いたいものあるか。」とメニューを渡されたが、オススメのものがあるらしいので「お任せします。」とだけ答えた

よく考えると本当に不思議な成り行きでここまで来たものだ
相手のことは何も知らないのに警戒することなく個室で食事をするなんて…
正直言って、堅気の人間には見えないのに


少し失礼なことも考え考えながら黙っていたら、向こう側の席からの視線に気づいた
目を正面に向けるとドフラミンゴさんがこちらの方をジッと見ていた
目が合っているとは思うのだが、サングラスが邪魔をしてハッキリとは分からない


「フフフ…やっと、ゆっくり座って話ができるな、紗良チャン。」

そう言って笑うドフラミンゴさんは楽しそうで自然とわたしの頬も緩んだ

「そうですね。まさかこんな素敵なところに連れて来てもらえるとは思いませんでした。ありがとうございます。」

「気に入っていただけたなら何よりだ。……あと、これを忘れる前に渡しとかねぇとな。」

そう言ってドフラミンゴさんはポケットから一つ、綺麗に包装された小包を取り出した

贈り物などされる心当たりがなく、何だろうと不思議に思いながらも受け取った
丁寧に包み紙を剥がして中を確認するとそこには可愛らしいピンク色のハンカチが入っていた

それを確認すると、一か月前のやり取りが思い出される

確かに、ドフラミンゴさんはわたしがハンカチを貸したときに買って返すと言っていたけど、まさか本当に、しかも今、渡されるとは思っていなかった


びっくりして顔を上げると、ドフラミンゴさんはその反応が気に入ったのか口元をにんまりと上げた

「フッフッフ!!言っただろ?買って返すと。」

満足気にわたしを見やるドフラミンゴさんに、わたしはまだ驚きを隠せずに見つめた


「で、でも、今日なんて偶然あっただけじゃないですか。いつ会うかも分からない、連絡先も交換していないのに買っていてくれたんですか!?」

「俺は必ずもう一度会えると思っていたと言ったはずだ。」

本当に勘だけだとは思えないほどの自信を含んだ声で笑いながらドフラミンゴさんが言った




改めてもらったハンカチを見ると、薄いピンク色で可愛らしい上に、肌触りがすごく良かった

ハンカチを広げると、端にフラミンゴの刺繍が縫ってあり、どこかドフラミンゴさんを想像させるそれは可愛らしかった

「ふふふ…これ、素敵です。ありがとうございます。」

優しくそのフラミンゴを指でなぞりながら微笑んでお礼を述べる

「気にすんな。そもそもは俺がハンカチをもらっちまったからだしな。」


「少々悩んだが、まぁ…それでよかったならよかったよ。」とドフラミンゴさんは続けた

女の人に贈り物なんて慣れていそうなのに…
なんて失礼な考えが一瞬横切ったが、実際は贈るよりも贈られる方が多いのかもしれない

そう考えると、一生懸命悩んでこれをわたしに選んでくれたというのは純粋に嬉しいと思う




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