あなた達と共に…

□共に…戦う
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これは、今から数ヶ月前に起きた事。
私達、フィフス・フォースの隊長を務めてる、悠輝の…過去……
いつもどおりの時刻に、いつものように下校する。
僕の名前は【氷上悠輝】、水川高校に通う高校1年生。
放課後、校舎の生徒昇降口から部活動生以外の生徒が出てくる中、僕だけは、パトリと呼ばれるスマホ型の端末を取り出した。
これを使って、僕はエテルノと呼ばれる場所に意識だけを飛ばし、フィフス・フォースと呼ばれる女子高生戦士部隊(スクールガールストライカーズ)の隊長を務めてる。
隊長の主な仕事は、彼女達の指揮である。
"ただ"見守っているだけではない。
そうやって見守ることで、彼女達は力を発揮するのだ。
そして今日も、いつものようにエテルノに行ったら、いつものように彼女達が迎えてくれた。
「隊長さん、おかえり。」
「おお〜隊長さ〜ん、おかえりなさ〜い!!」
「まっほー、おかえりなさい♪」
「隊長さん、おかえりなさいです。」
「隊長さん、おかえりなさい。」
彼女達は僕が最初に任されたチームのメンバー、【夜木沼伊緒】【沙島悠水】【菜森まな】【澄原サトカ】【美山椿芽】の5人、このメンバーのチーム名は【アルタイル・トルテ】と呼ばれている。
『ただいま。』
「隊長さん、お腹空いたです、メロンパンあるですか?」
『あるよ、はい。』
「おお、これで助かるです。」
「サトカ、さっきおやつ食べたばかりだよね?」
「まぁ、良いんじゃない?いつものことだし。」
『あ…アハハ…』
僕は毎日こうして、エテルノで皆と楽しく過ごしていた…




………でも…………




毎日同じようにとは限らない……






"いつもと違う"日は、いつか必ず訪れるのだから…
夏休みのある日、僕は友人の諒と一緒に旅行に行った。
母親の許可を得るのも大変だったが、僕の全身全霊の頼みを断れずに、母親は許可してくれた。諒の両親と一緒に旅行に行けて、夏休みのいい思い出ができた。
父親は僕が生まれてすぐ病気で亡くなってしまって、母親は外国で何かの仕事をしているのだが…その仕事の内容まではわからない。
諒はそんな僕を気遣ってくれたのだろうか。
帰りの飛行機の中でも、二人で暇つぶしに雑談してた。
「なぁ悠輝。」
「ん?」
「今度さぁ、ゲーセンにでも行こうよ。」
「あぁ、うん、気が向いたらな?」
「いっつも気向いてるじゃんか。」
「ハハ、まぁ、そうだな。」
そんな会話をしているとき、僕は窓から外を見ていて……"あるもの"を見てしまった。
(…ん?あれは……)
見覚えのある姿……あれは……
しばらく見続けて、ようやくその正体を把握した、間違いない、見間違えるわけない、今まで何度も見てきた、あれはまさしく…
「……オブリ……」
僕は小さな声でつぶやいた、その声は隣に座ってた諒にすら聞こえなかっただろう。
オブリは普通の人には見えない、だから誰にも言えなかった、でも、どうしてオブリあんな所に?
確認できたオブリの数は8体ほど、全て偵察型のオブリのようだ、全員飛行機のエンジンの辺りに集まっている…
(……嫌な予感がする……)
エンジンの周りに集まって、何かをしようとしている、その嫌な予感は……………的中した。
ドオオオオオン!!!!
エンジンが爆発した。
「な、何だ今の揺れは!?」
まずい、このままじゃ!
ドオオオオオン!!!!
爆発は一度だけではなかった、最初に爆発したエンジンの隣のエンジンまで爆発した…さらに…
ズドオオオオオオオン!!!!
自分の位置からは把握できなかったが、どうやら残り2つのエンジンも破壊されたようだ。
「や、やばいぞ…どうしよう、悠輝!!」
「落ち着こう、座って、シートベルトをしっかり締めて、乗員の指示を待とう!」
「わ、わかった!」
そう言って諒は席についてシートベルトを締める。
……エンジンが4つ全て破壊されたとなると、着陸は非常に困難になる…でも…
(死にたくない、死ねない…エテルノで待ってるみんなに何も言わずに、死ぬなんて……)
そんな事を考えてると、機長からアナウンスで指示が出た。
『乗客の皆様にお知らせします!当機にエンジンのトラブルが発生したため、これより不時着します。』
………不時着……エンジンが全て破壊されてるのに……上手くいくのだろうか…
(いや、きっと上手くいく…信じよう。)
そんな事を考えている間に、機体はどんどん降下していく、雲を抜けて、大陸が見える。
(見えた。)
偶然空港が近くにあった、助かるかもしれない……そう思った時だった……
ガタンッ!!!!
(!?)
「な、何だ!?」
再び窓の外を見る、するとそこには…
「急襲妖魔………!?」
そう、そこにいたのは竜のような姿をした妖魔、急襲妖魔(レイドオブリ)だった。先程の偵察型妖魔が呼んだものだろう。

ガタンッ!!!!
ガタッ!!
急襲妖魔の攻撃で機体が不安定になる。このままじゃ、本気でマズい!
滑走路が見えてきた、陸は近い…すると、オブリ達が急に撤退した。
ゴゴゴゴゴ
だが、機体の揺れは収まらない。
「くっ!!」
「あっ、悠輝、あれ!!」
「!!」
諒が指差した先には、ターミナルがあった。
(このままじゃ、確実にぶつかる。)
「止まれ、止まってくれ!!」
諒は顔を伏せて、そう言っていた。
でも…
エンジンの逆噴射は不可能……このスピードじゃ、止まれない……
「嫌だ……」
彼女達をおいて逝くなんて…できない!
「頼む……ぶつかっても…死ぬようなことだけは…ないで…ほしい……!!」
そう願っていた、そして遂に
ズドオオオオオン!!!!
機体はターミナルに衝突した。
「うわっ!!」
衝突の影響で機体は一層激しく揺れる。だが、それだけでは終わらなかった。
バキッ!!!!
「!?」
悠輝のシートベルトが……壊れた…
悠輝の身体はシートベルトの保護を受けることなく、窓を突き破って、機体の外に投げ出された。
何メートルぐらい飛んだだろうか。
柱のようなものに頭を強く打ち付け…落下して……自分の体とは思えなくなるほど、身体を動かせなくなって、わかるのは、頭が濡れるような感覚だけ……
それからの記憶は……全くない。
………それからどれくらい経ったかはわからない。
気がついたらベッドの上だった。
身体を起こす。
頭が痛い。
隣には、諒がいた。
「良かった!!」
「ぁ…」
!……声が……出せない……喋れない……一体何が……
「悠輝………」
「……」
諒が深刻な顔をして僕の顔を見た、そして、こういった。
「お前が寝ている間に、医者から聞いたんだけど…お前……
「……」
ひと呼吸おいて、諒はこう言った。
「声帯溝症だって。」
「…ぁ……!?」
そのとき悠輝は、声を出すことなく、ただ涙だけを流していた。
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