▽Prince of the song

□砂糖の山に埋もれて
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「カミュさん、そんなに砂糖入れたら体に悪いですよ」

「貴様に言われる筋合いは、ないと思うぞ?この愚民めが」




いつものように紅茶の入っているカップの中に、ジャリジャリと音がするほど砂糖を入れる彼に、いつものように注意をすると、いつものように棘のある言葉が返ってきた。

それをはいはい、と流すのも、いつものこと。






これが、いつもの事になったのは、つい最近で。





前々から事務所の後輩の春歌ちゃんから、カミュのことで相談されていた。

それを偶然聞かれた、というだけ。



それだけなのに、私は家に連れてこられた。

そして、ここに軟禁状態、という訳だ。






「カミュさん、紅茶のお代わりはいかがですか?」

「あぁ、いただくとしよう。」




カミュともこうして自然に話せるようになったのも、そのおかげとも言える。





家は広いし、温度も快適。

好きなこともしていいし、仕事も行かせてもらっている。

何一つ不自由はない。




「ところでカミュさん、どうして私なんですか?」

「何がだ」

「いや、あの、あの場にいたのは私だけじゃなくて、春歌ちゃんもいたはずで」

「あやつに俺の周りのことが出来ると思うのか?」




出来ると思う、と思ったのは私だけではないはず。


お代わりの紅茶と、有名なお菓子屋さんのマカロンも添える。

落とさないように、慎重にカミュのいる所へ運ぶ。






「ふん、少しは俺の気分も読めるようになってきたのではないか?」

「そうかもしれないですね、だいぶここにいますし」



ごきげんなカミュに対し、私は少し嬉しくなった。


ふふ、と微笑みをこぼし、砂糖を渡した。





「ところで、名無しさん...この家から出ていきたいか?」

「え?」


あまりに突然で、手に持っていたマカロンを1つ落としてしまった。




「えっと、どうしてですか?」

「いや、ふと思っただけだ。深い思いはない」

「そうですか...」





まぁ早く自分の家には帰りたいが、ここにいても不自由はないし、

かと言って帰らない、とも言えない、





「カミュさんは、どう思ってるんです?」

「どう、とは?」

「その、私がいて迷惑じゃ....」

「迷惑だったら、置いているわけがないだろう。その小さい脳みそをフル回転させろ馬鹿者が」




そう言って紅茶を口に含むカミュ。




私も、ふと我に返ると、あぁ、そうだなぁ。と思えてきて、なんだか恥ずかしくなった。




「俺は」

「えっ...?」

「俺は、お前の煎れる紅茶が嫌いではない」

「え、あの」

「だから、」






俺のそばにいてくれないか、
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