dream
□優しい君と、意地悪な君と
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「…で?どういうことか説明してくれるよね…?」
「……はい…」
一松と二人きりになった部屋の中。
一松は未だ腕の力を緩めてはくれないので、体勢はそのままに話し続ける。
そのまま、と言っても、やはり猫の姿のときとは若干異なっている訳だが。
最初は一松の腕の中にすっぽりと収まっていた私だが、今は胡座をかいた一松の足の上に座って、背後から抱きすくめられている状態だ。どきどきする。しかし一歩間違えれば、締め殺されてしまうような気がしないでもない。
だから私は、今の自分の気持ちを、包み隠さずすべて伝えることにした。
一松に構ってもらえなくて寂しかったこと。
猫になれば、一松に構ってもらえると思ったこと。
猫になって、一松がたくさん構ってくれて嬉しかったこと。
そして……一松の優しさに甘えて、一松に迷惑をかけてしまったこと。
「迷惑かけて、本当にごめんなさい…」
「……」
一松は何も言わない。
その代わり、私を抱き締める腕に力がこもる。
「…ほんと馬鹿」
「ごめん…」
「っ、お前じゃない。…俺のほうこそ、ごめん」
しばらくの沈黙の後、
「…今日は歩き疲れた」
「っ、ごめ…」
「いいよ、もう謝らなくて。…それより、明日も猫になって来てよ」
「…え?」
「すごくかわいかったから。ななし。白くてふわふわで。……家、探さなくていいなら、もっと、」
触りたい、撫でたい。
耳元で囁くように言われて、びくっと身体が反応してしまう。
その反応を見て、一松が微かに笑ったような、気がした。まるで面白いおもちゃを見つけたかのように。
ああ。きっと今、意地悪な顔してる。
「ななし。好き」
「…!」
そうしてしばらくの間、背後から一松に構われたのだった。